研究課題
本研究は、光による超伝導マクロ波動関数の制御、超伝導コヒーレンスの制御を目的として、テラヘルツ波領域から近赤外光領域に亘る広い光子エネルギーの光パルスを駆使し、光励起された超伝導体の非平衡ダイナミクスを解明することを主眼とした。特に、秩序変数の振幅振動に相当するヒッグスモード、位相の振動に相当するジョセフソンプラズマといった集団励起に注目し、その実時間観測を行うことで光励起後の超伝導秩序変数のダイナミクス調べた。1)昨年度、ポンププローブ分光法により観測に成功した高温超伝導体のヒッグスモードを、第三高調波発生の手法によっても観測し、その性質を明らかにすることを目指した。ドイツのドレスデンにある加速器施設の高強度テラヘルツ波光源を用いて、d波ペアリング対称性を有する銅酸化物高温超伝導体において、ヒッグスモードに由来する第三高調波発生を観測することに初めて成功した。温度依存性を詳細に計測した結果、超伝導転移温度以上でも第三高調波が発生することが明らかとなり、転移温度以上における局所的な超伝導コヒーレンスの存在を示唆する結果を得た。2)銅酸化物高温超伝導体を光強励起した場合の超伝導秩序の状態変化を、ヒッグスモードに加えて、CuO面間の超伝導コヒーレンスを反映するジョセフソンプラズマ共鳴の観測からも調べた。La系銅酸化物高温超伝導体において、強い光励起を行った場合には、超伝導の抑制が起きており、超伝導増強は生じないことを明らかにした。また、従来の光誘起超伝導の実験の解析に主に用いられてきたテラヘルツスペクトルの解析手法の問題点を見出し、超伝導転移温度以下のスペクトルの振る舞いに対する解釈に誤りをもたらす可能性があることを明らかにした。3)マルチバンド超伝導体である鉄系超伝導体に対して、THzポンプTHzプローブ分光法を用いてヒッグスモードを観測することに成功した。
平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
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http://thz.phys.s.u-tokyo.ac.jp/publications.html