研究課題/領域番号 |
15H02108
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
小形 正男 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (60185501)
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研究分担者 |
福山 秀敏 東京理科大学, 付置研究所, 教授 (10004441)
鈴村 順三 名古屋大学, 理学(系)研究科(研究院), 名誉教授 (90108449)
小林 晃人 名古屋大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (80335009)
伏屋 雄紀 電気通信大学, 情報理工学(系)研究科, 准教授 (00377954)
白石 誠司 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (30397682)
田嶋 尚也 東邦大学, 理学部, 准教授 (40316930)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ディラック電子 |
研究実績の概要 |
本研究課題では、理論と実験とが密な連携を取りつつ、バルク測定が可能なディラック電子系物質が示すマルチフェロイクスについて探求することを目的としている。この目的のために、以下の研究が進められた。
1)ディラック電子系における誘電率について久保公式とグリーン関数を用いて調べた。その結果、誘電率と電場応答、反磁性帯磁率などの間に相対論的な対称性による普遍的な関係があることを見出した。また、ディラック電子の超伝導状態におけるマイスナー効果を調べた。その結果、バンド間効果を起源とする非自明なマイスナー効果を示すことを発見した。 2)長らく謎であった正孔のスピン磁気モーメントの大きさ・異方性の起源について、マルチバンドの効果をk.p理論に基づき解析することによって明らかにすることに成功した。実験的には、磁性絶縁体イットリウム=鉄=ガーネット上にビスマス薄膜を成長させ、逆ラシュバ=エーデルシュタイン効果と逆スピンホール効果の相関を明らかにした。 3)分子性ディラック系において観測されたフェリ磁性ゆらぎのメカニズムを理論的に解明し、ディラック電子系における短距離クーロン相互作用の重要性を明らかにした。また、ラシュバ型スピン軌道相互作用を有するディラック電子系では、空間変化する静的な軌道磁場がスピン分極を誘起し、逆にゼーマン磁場が平衡電流を誘起することを示した。実験的には、薄片結晶をレーザー加工して電位分布と伝導度の異方性を調べる測定システムを構築した。また、電子相関によるバレー自由度が自発的に破れることを示唆する実験結果が得られた。ディラック点の出現に関しては、分子間のホッピングパラメータの相互の関係を調べ、偶然の縮退で生じるディラック電子の位置づけを明らかにした。さらに自由度が多い分子性導体でも、時間反転対称点における波動関数の偶奇性によるディラック点存在条件が共通であることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
各グループは理論および実験による研究を順調に開始した。またこの科研費に参加している研究者を中心に、関連する理論研究者および関連物質の実験研究者を招いて今年度最初の研究会を行った。研究会を通して、参加研究者同士の共同研究や実験結果の説明に向けて新たな研究が始まった。 また国際会議にもいくつか参加し、ディラック電子に関する研究が進展していることを海外に向けて発信した。研究課題ではポスドクを雇用することを計画していたが、優秀な研究者を研究グループに迎え入れることができた。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き各グループの研究を続けるとともに、これまで共同研究がなかった者同士の共同研究を開始したり、実験との比較を精力的に行うようにしたい。また、今後も引き続き関連する理論研究者および関連物質の実験研究者を招いた研究会を行う。また国際会議にも参加し海外へ発信を続ける。
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