研究課題
準結晶及び近似結晶に関し、以下の成果を得た。(1)量子臨界現象を示す準結晶と同型の準結晶・近似結晶を元素置換法により合成し、蔡型クラスター(原子集団)の大きさと価数との相関を調べた。その結果、価数とクラスターの大きさとの間に相関があること、臨界的なクラスターの大きさのところで価数が急激に変化すること、および、Au-Al-Yb準結晶・近似結晶がその臨界的大きさの近傍に位置することを見出した。(2)超伝導を示すYb系近似結晶に対し光電子分光実験を行った。その結果、蔡型クラスターを構成するYbイオンにおいて、2種類の価数が存在することを見出した。(3)これまで見出されてきた価数揺動準結晶・近似結晶は全てYbイオンを含んでいたが、Ceを含む近似結晶で初めての価数揺動(重い電子系)物質を発見した。この物質は、高温で局在磁性を示すとともに、低温では遍歴的となり、さらに極低温下でスピングラス転移を示す。このスピングラス転移温度は、圧力印加に対し単調に増加する一方、CeをYで置換することにより、単調に減少することを明らかにした。また、その量子臨界性を明らかにした。(4)準結晶は幾何学的構造においては長距離秩序を示すが、電子状態としての長距離秩序(強磁性や超伝導など)を示すことは無かった。(昨年度の)Zn-Al-Mg準結晶における超伝導(転移温度は50mK)の発見が(インパクトファクターの高い)学術誌に掲載された。(5)Zn-Sc系準結晶・近似結晶に対し低温輸送現象およびトンネル分光実験を行った。その結果、準結晶・近似結晶のいずれにおいても擬ギャップが存在することを見出したが、スパイキーな状態密度を見出すには至らなかった。また、測定温度領域で抵抗が発散的な増大を示す準結晶を見出したが、試料依存性が大きく、準結晶特有の物性であるかは、今後の課題として残された。
1: 当初の計画以上に進展している
準結晶では初めての超伝導の発見の(学術誌上での)発表は、新聞やwebニュース等でも取り上げられ、大きな話題となった。これは、準結晶研究において歴史的な成果と言えるものであり(2018年7月に米国で開催される国際会議において招待講演の予定)、当初の期待以上の成果である。また、所期の目標である「非通常型の量子臨界現象の起源の解明」に対しては、価数の重要性が明らかになりつつあり、研究は計画通りに進んでいる。以上より、当初の計画以上に進展していると判断した。
これまでの計画を予定通り進めて行く。特に、H30年度は最終年度であるため、これまでの成果を論文としてまとめる。
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Nature Communications
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