研究課題
近年、テラヘルツ周波数帯の円偏光照射によって半導体中の光生成電流の方向を切り替えられる現象が注目されている。本研究課題では、近赤外ベクトル波形整形技術により、直線偏光がTHz帯域の任意の周波数で回転するねじれ偏光パルスを生成した。THz電磁波に代わり、このねじれ偏光パルスを用いて、0~50THzの範囲で半導体中キャリアのTHz応答を調べた。モード同期Ti:サファイアレーザーからの光パルスを、ベクトル波形整形器に導入した。独立した直交偏光の各周波数成分の位相を、空間光変調器で任意に制御しフーリエ合成することで、任意のテラヘルツ周波数で回転するエンベロープヘリシティを生成する。試料は、Heクライオスタット内に置いた(001) 面の変調ドープGaAs/AlGaAs量子井戸である。右回りねじれと左回りねじれとを光弾性変調器で50kHzに変調し、同期したヘリシティ依存光起電力をロックイン増幅器で検出した。電極間の領域にねじれ偏光パルスを照射した場合にのみ、大きな光起電力信号を観測した。ねじれ偏光パルスの持続時間を変化させて、光起電力信号のTHz周波数依存性を測定した。エンベロープヘリシティ周波数の増加に伴う光起電力信号の単調増加は、GDD 8000~20000 fs^2で観察された。偏光ねじれパルスのヘリシティの向きを逆転させると、光起電力信号の方向も正負が反転した。エンベロープヘリシティでフリップする電流を観測したことは、運動量方向にスピン分裂した伝導帯サブバンドの占有数が、ねじれ偏光パルスの照射で誘起されるラマンプロセスによって片方のスピンバンドに偏った結果と解釈した。以上の結果から、本研究課題で提案した「ベクトル波形整形パルスによる二次元電子系の操作」に成功したものと考えられる。
29年度が最終年度であるため、記入しない。
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Structural Dynamics
巻: 4 ページ: 044033
10.1063/1.4989862
Journal of the Optical Society of America B
巻: 34 ページ: 1004-1015
10.1364/josab.34.001004