研究課題/領域番号 |
15H02124
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
田中 宏幸 東京大学, 地震研究所, 教授 (20503858)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ミュオグラフィ / 火山 |
研究実績の概要 |
我が国は、素粒子ミュオンを用いた火山内部のイメージング(ミュオグラフィ)に世界に先駆けて成功した。成果は世界に波及し、仏、伊、西諸国では火山観測に、また英、米、カナダでは各々廃棄物地下処分場、彗星探査、資源探査にと幅広い対象に対してミュオグラフィ観測技術の開発が急ピッチで進められている。世界の急追はあるものの、我が国は未だ世界をリードする立場にある。本研究では我が国から世界へと波及した新しい地球観測技術を進化させ、火山内部のマグマ動態を分刻みで透視可視化できる技術を開発することで、ミュオグラフィによる火山観測学分野で、我が国が今後も世界を主導し、国際的プレゼンスを示す。
また、活動的火山内部のマグマ動態のイメージングは噴火予知技術の向上にとって、喫緊の課題であるが、未だ開発途上である。例えば、桜島における地震波を用いた先行研究 (Iguchi et al. 2008)から、10分程度の時間スケールで噴火の直前、直後で山体が膨張収縮することが示唆されている。これはマグマの通り道(火道)が膨張収縮するためと考えられているが、破砕物、火山灰、ガスの混合物で満たされた複雑な物質から構成される火道がどのようなメカニズムで膨張収縮するのかが未だ分かっていない。本研究成果を応用することで将来実現できる大型並列ミュオグラフィ観測では、10分を切る時間分解能で火口近傍内部を確認できるようになる、
そのためには、小さな有感面積の低雑音ミュオグラフィテレスコープを複数台並列し、同期運用することで、実効的な大口径化を実現させる必要があるが、平成27年度は有感面積1平米程度の低雑音ミュオグラフィテレスコープ2台を作成して、テレスコープ高速同期電子回路システムを開発した。また、システムの検証試験を実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度は(1)低雑音テレスコープの製作: 薩摩硫黄島の観測(Tanaka et al. 2014)で既に実績が上がっている有感面積2平米、信号出力数が180チャンネル/台の低雑音ミュオグラフィテレスコープの実機(図1(上))に拡張可能な小型テレスコープを2台製作した。 (2)テレスコープ高速同期電子回路システムの試作:低雑音ミュオグラフィ観測に対して安定的な運用が可能であることが既に確認されている高速ミュオグラフィデータ収集回路システム(Tanaka and Yokoyama 2013)の拡張試験を行った。複数の電子回路を中央処理回路で一括処理できるような並列ミュオグラフィデータ収集回路システムを構築した。テレスコープ間の同期速度は40ナノ秒以下が達成された。(3)プロトタイプ並列テレスコープの動作試験:完成した2台のプロトタイプテレスコープと試作したテレスコープ高速同期電子回路システムを組み合わせた並列運用試験を行った。
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今後の研究の推進方策 |
本研究提案は、火山噴火メカニズムの理解を一層深める革新的技術を開発し、活動的火山を対象にその技術の検証を行うことを目的とするものである。この目的を達成するために平成28年度は基礎技術開発からテスト観測実施へ向けた移行フェーズと位置づけ、以下の3つの項目について実施する。(1)並列ミュオグラフィテレスコープ用自動データ解析ソフトウェアを開発し、前年度までに動作が確認されている小型並列ミュオグラフィテレスコープを用いて機能試験を行う。試験項目は以下の通りである:(A)ミュオンイベントの記録時刻及びテレスコープの通過位置が正確に記録されるか。(B)方向毎のミュオンイベント数のヒストグラムが自動的に生成されるか、の2点について並列テレスコープの機能検証を行う。平成29年度は完成した並列ミュオグラフィテレスコープを用いて、桜島を対象にしたテレスコープのテストを行う。
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