研究課題
GHz関係では、前年度のS波バッファロッドの試作品を完成品に纏め上げることができた。バッファロッド内で多重反射が確認されているが、サンプルを当てた場合のサンプルのシグナル確認には至っていない。GHzバッファロッドからサンプルのシグナル確認は簡単ではなく、面の清浄度、pH、押し付け力、押し付け方などが絡んでくることが経験からも明らかになってきた。P波測定で、面の清浄度やpHが関係することが前年度の研究で分かっていたが、今年は、押し付け力をモニターする仕組みを開発し、押し付け方も工夫することにより、実際のDACセルに挟んだ試料からのP波測定に成功した。高周波共振法では、含水フォルステライトの測定を試みた。高周波共振法では、結晶試料の軸たてを行い両面研磨するという作業を3回繰り返す必要がある。大変手間のかかる作業であるが、10月21日の地震の影響で試料紛失という事態になってしまった。非弾性X線散乱では、ブリッジマナイト、金、白金の高圧下の結晶弾性定数を測定することができた。特に、金の測定からは、絶対圧力スケールを提案することができた。金については、20GPaまで測定したが、5GPa近辺までは体積弾性率がほぼ一定という興味深い結果が得られた。共同研究者に第一原理計算を依頼したところ、9種類のfcc金属の体積弾性率を計算し、金とイリジウムで体積弾性率の異常を見出した。実験で見つけた弾性異常が計算からも確認できたことで、論文として投稿した。現在、査読コメントに沿って改訂中である。
2: おおむね順調に進展している
高周波共振法では地震の影響もあり、前年度中に予定した測定を実施できなかった。GHzは開発に時間がかかっているが、遅いながらも着実に進歩してきている。今、直面している問題点は誰かが克服しなければならないものであるが、DAC試料からのシグナルを確認できるところまで来たので、実際の試料での測定に挑戦できるところまで来たといえる。非弾性X線散乱では、DAC中での結晶弾性に成功し予想以上に順調に進展した。一部に遅れがあるが、総合的には順調である。
本年度の最大の目標は、GHz音速法でDAC中の試料のP波速度を実測することである。試料としては、最初はMgOを考えている。ついで、ブジッジマナイトの測定を行う。ともに下部マントルの主要鉱物であり、成功すれば高圧地球科学分野での大きな成果になる。高周波共振法では、前年度に達成できなかった含水フォルステライトの測定に再挑戦する。非弾性X線ではブリッジマナイトの結晶弾性に対する組成効果を系統的に調べることと、金の高温高圧弾性測定を実施する。温度は200C程度を想定しているが、弾性に対する温度効果の実験データは少なく、成果が得られれば、状態方程式や圧力スケールの議論に対し重要な拘束条件を提供できると考えている。
すべて 2016 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件、 謝辞記載あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 1件) 備考 (2件)
High Pressure Res
巻: 36 ページ: issue2
10.1080/08957959.2016.1164151
Scientific Reports
巻: 6 ページ: 33337
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http://www.misasa.okayama-u.ac.jp/jp/
http://www.misasa.okayama-u.ac.jp/~hacto/