研究課題
非弾性X線散乱実験(IXS)では、白金の単結晶弾性を約20GPaまで測定することに成功した。そのデータから、20GPaまでの状態方程式を作成し、前年度の測定した金の結果と比較した。これらの状態方程式は、IXSで取得した体積弾性率と同時測定した格子定数のデータのみを使っており、一次圧力スケールと位置付けられるものである。金・白金とも共通して、従来よりも低めの弾性定数(5-10%程度)が得られており、結果として、圧力スケールも従来の物よりも低めになる。このことは、従来からも問題になってきており、IXS研究を今後も続ける際の、避けては通れない解決すべき課題と認識している。金と白金を同時圧縮した実験データが別にあり(Akahama et al.,2002)、それをもとに比較した結果、我々の提案する金と白金の圧力スケール間で矛盾が無いことが分かった。本問題の重要性に鑑み、NaClでも同様の測定を今後も行い、金・白金・NaClの、最も圧力スケールとして使用される、三つの物質をもとに、総合的な考察を実施していく予定である。GHz音速法では、P波バッファロッドと試料との接合法に進歩があった。すなわち、アンモニアや希釈塩酸を使うと音波の伝達が格段に向上する。なんらかのpHに関係する現象があり、この現象の解明に興味を持っている。表面状態に関することなので、原子間力顕微鏡観察が有効と考えている。ダイヤモンドアンビルセルからの測定も成功例が出てきている。圧力が高くなるとシグナル検出が困難になってくるが、ダイヤモンドアンビル背面の変形が原因と考えている。有限要素法で評価した変形量は僅かとはいえ、音波伝達にとって致命的である。この問題も、薄い金属箔を使用することで改善できることが分かった。S波バッファロッドの試作品作成に成功しているが、今後、完成品の完成を目指して、努力を継続する。
2: おおむね順調に進展している
非弾性X線散乱は、SPring-8のビームタイムも十分な時間を確保して、確実に成果を出している。測定結果も順調に論文として発表できている。今後努力すべきは、高温・高圧同時発生での測定を早期実施することである。高温発生については、まだ完全に信頼できるシステムが構築できておらず、今後の努力を傾注すべきことである。GHz音速法も、時間がかかっているが、少しづつではあるが進歩している。世の中で確立している方法ではなく、自分で考えながらやっている研究手法である。最近の進歩に対し、てごたえを感じており、成果を出せる日は近いと、確信している。
これまで行ってきた研究方法を、基本的に今後も継続する。今まで、上限1GHzの周波数で実験を行ってきたが、3GHzまでの発振器を確保できる目途がついたので、今後は、1GHzと3GHzの2セットのシステムで研究進捗速度を向上させる。また、3GHzセットが入手できることで、より高周波、すなわち、より薄い試料にも挑戦できることになり、研究の方向性が広がる。
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Jpn. J. Appl. Phys.
巻: 56 ページ: 095801
doi.org/10.7567/JJAP.56.095801
http://www.misasa.okayama-u.ac.jp/jp/
http://www.misasa.okayama-u.ac.jp/~hacto/