研究課題/領域番号 |
15H02128
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
米田 明 岡山大学, 惑星物質研究所, 准教授 (10262841)
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研究分担者 |
芳野 極 岡山大学, 惑星物質研究所, 准教授 (30423338)
山崎 大輔 岡山大学, 惑星物質研究所, 准教授 (90346693)
辻野 典秀 岡山大学, 惑星物質研究所, 助手 (20633093)
福井 宏之 兵庫県立大学, 物質理学研究科, 助教 (90397901)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 弾性 / GHz / 非弾性X線散乱 / マントル / 圧力スケール / ブリッジマナイト |
研究実績の概要 |
本基盤研究Aでの研究目標は、“マントル鉱物の結晶弾性のマントルその場条件での測定”である。GHz音波、X線、レーザー光のセル内への導入実績のあるダイヤモンドアンビルセル(DAC)を高圧装置として採用し、測定対象は重要なマントル鉱物であるワズレアイト、リングウタイト、ブリッジマンナイト(MgSiO3ペロブスカイト)、フェロ ペリクレース、CaSiO3ペロブスカイト、MgSiO3ポストペロブスカイトとしている。端成分組成のデータだけでなく、鉄やアルミ ニウム、さらには水の影響を解明するデータも重要である。 非弾性X線散乱実験(IXS)では、NaClで20GPa、Taの単結晶弾性を約33GPaまで測定することに成功した。一方、Ptの20GPaまでの状態方程式を作成し論文として纏め、HPMPSの特集号に投稿し受理されている。正式発表はまだであるが、ネットで閲覧できる状態になっている。このPtと前年度の測定したAuの結果を比較検討中である。これらの状態方程式は、IXSで取得した体積弾性率と同時測定した格子定数のデータのみを使っており、一次圧力スケールと位置付けられるものである。GHz音速法も、時間がかかっているが、最近、重要な進展があった。世の中で確立している方法ではなく、自分で考えながらやっている研究手法である。最近の進歩に対し、手ごたえを感じており、成果を出せる日は近づいている。ここまでの技術開発については学会等で発表している。論文化できるデータ取得を2019年度中に行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
非弾性X線散乱は、SPring-8のビームタイムも十分な時間を確保して、確実に成果を出している。測定結果も順調に論文として発表できている。今後努力すべきは、高温・高圧同時発生での測定を早期実施することである。高温発生については、まだ完全に信頼できるシステムが構築できておらず、今後の努力を傾注すべきことである。GHz音速法では、オリビンとKClを試料として14GPaまでP波速度の測定に成功した。GHz法に参加してくれた東北大学の大学院生のおかげで、音速決定法や試料の長さ測定法で重要な進歩があった。またS波バッファロッドの開発にも成功した。ここまでの開発状況を日本語での解説として纏め、日本高圧力誌に投稿し受理されている。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、GHZ音速法でのDACセルからのデータの取得を第一目標とする。最初の試料として鉄のbcc-hcp転移に伴う音速変化を調べる予定である。同時に、現在までの圧力上限の15GPaを50GPaまで伸ばすことを行う。 一方、非弾性X線散乱では、Taの結晶弾性の測定を50GPa超の圧力領域で実施する。また、代表者と福井(分担者)はMgSiO3組成と(Mg0.954,F e0.046)0.988Al0.023Si0.988O3 組成の ブリッジマンナイト(ペロブスカイト)の結晶弾性をSPring-8,BL35XUの非弾性X線散乱法を用いて測定したが、その研究をさらに深化させる。バルク音速S波速度の組成による逆相関変化(鉄とアルミニウムの固溶によりバルク音速は増加しS波速度は減少する)という興味深い現象が確認できている。この効果の原因を確定するために、今後は、鉄だけが入った試料、アルミニウムだけが入った試料の測定も必要である。鉄が入ったブリッジマンナイトの測定はブリリュアン散乱法では困難であるため申請者グループの研究は国際的にも重要である。
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