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2016 年度 実績報告書

日本内湾の堆積物を用いた高時間解像度の環境復元と人間社会への影響評価

研究課題

研究課題/領域番号 15H02139
研究機関東京大学

研究代表者

川幡 穂高  東京大学, 大気海洋研究所, 教授 (20356851)

研究分担者 山岡 香子  国立研究開発法人産業技術総合研究所, 地質調査総合センター, 研究グループ付 (30610399)
鈴木 淳  国立研究開発法人産業技術総合研究所, 地質調査総合センター, 研究グループ長 (60344199)
研究期間 (年度) 2015-04-01 – 2019-03-31
キーワード古気候 / 古環境 / 堆積物 / 考古学 / 歴史学 / アルケノン水温 / 陸域植生 / 生物生産
研究実績の概要

インド夏季モンスーンは南アジアに多量の降水をもたらす重要な気候システムの一つである.南アジアの降水システムを理解するためには,過去のインド夏季モンスーン変動及び他の気候システムとの関連性を明らかにする必要がある.本研究では,アンダマン海北部から採掘された堆積物コアStMY6の炭素14年代測定及び粒度分析,地球化学分析(全有機炭素(TOC),C/N,主要元素濃度)によって,エーヤワディー川流域における過去700年間のインド夏季モンスーン降水量変動を復元した.これらの結果(粒度分布の最頻値,化学風化強度)は,およそ西暦1600年以前はエーヤワディー川流域での夏季降水量が相対的に低かったことを示唆している.また,約1600年から1800年にかけて降水量が増加したことが示唆された.1800年以降の堆積記録は,1800年から現在にかけて夏季降水量が相対的に大きい状態で維持されたことが示唆された.このことは他地域のインド夏季モンスーン変動と整合的であることから,本研究は約1600年から1800年を境にレジームシフトに類するようなインド夏季モンスーン変動を示唆している.そして,1600年から現在までのインド夏季モンスーン全体の遷移的な強化がエーヤワディー川の流量増加を引き起こし,堆積物供給源の変化が引き起こされたことが明らかとなった.これらの結果は国際誌に投稿され,印刷された.大阪湾のコアについて,帯磁率と粒度分析,XRD分析を行った.その結果,3000年間の水温は22-25度の間で推移していたことがわかった.水温の極大は600A.D.,800A.D.,1420 A.D.あたりで,逆に極小は650A.D.,1000A.D.,1600A.D.あたりであった.大阪湾周辺では,ヨーロッパで認められるような典型的な中世温暖期は存在しなかったということがわかった.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

分析については,密度はガンマ線透過率から計算した.採取された堆積物かコアチューブに入った状態のまま非破壊で,分析を行った.ガンマ線源には137Ce (370 Bq)が用いられ,計測条件は,測定間隔1 cm,各点の測定時間は10秒間である. ガンマ線透過率はほほ試料の密度を示すと考えられるので, ガンマ線透過率から湿潤密度への変換は同様な条件で計測されたアルミ板を用いて作成されたキャリブレーションカーブを利用したた.次に,粒度分析については,1.2N 塩酸を用いて無機炭酸カルシウムの除去を行った後,2mol の炭酸ナトリウムによって生物源オパールを除去した.そして,生物源粒子による影響をなくした後, Malvern 社のレーザー回折散乱式粒度分析装置を用いて高知コアセンターで行った.1 回の測定で1 ミリ秒の測定を5回行い,平均化するため,高い測定再現性が可能である.測定は装置を立ち上げた後,3 回の洗浄を行った.現在のところ,広島湾,大阪湾,ミャンマー沖コアと順調に分析が進行している.

今後の研究の推進方策

大阪湾のコアについて,アルケノン水温に基づく気温の復元に関して,古墳時代の環境復元研究について新たな分析が望まれる.これは,湾内の水温が気温と高い相関を有するという特性を活かして,沿岸堆積物柱状コアを用いて高時間解像度で高精度の気温と関連環境パラメーターの復元に本研究の特徴があるからである.一方,当時の大阪府堺市の周辺では巨大古墳が作られていたので,この情報を集める.また,当時の大阪湾の海洋環境についても古文献などから情報を集める.噴火湾のコアの解析を始めるにあたり,年代モデルを構築し,このコアが解析に値するか,どうかを検討する.また,噴火湾のコアについても水温の復元と気温の推定を行なえると日本の南北での温度の分布が明らかになると期待される.なお,花粉分析値を基に陸上植生の復元も行い,海洋から得られたデータと陸域の復元環境データとの比較を行うことも重要と考えられる.噴火湾は,津軽海峡を挟んで陸奥湾と向かいあっているので,陸奥湾の結果とも比較すると有意義と思われる.

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2016

すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 3件、 査読あり 3件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 3件)

  • [雑誌論文] A review by the chief editors of some of the most popular papers published by PEPS in 2014?20152016

    • 著者名/発表者名
      Iryu Yasufumi、Kuramoto Kiyoshi、Satoh Masaki、Matsumoto Jun、Yoshioka Shoichi、Kawahata Hodaka、Tada Ryuji
    • 雑誌名

      Progress in Earth and Planetary Science

      巻: 3 ページ: 1

    • DOI

      10.1186/s40645-016-0079-4

    • 査読あり / 国際共著
  • [雑誌論文] An X-ray spectroscopic perspective on Messinian evaporite from Sicily: Sedimentary fabrics, element distributions, and chemical environments of S and Mg2016

    • 著者名/発表者名
      Yoshimura Toshihiro、Kuroda Junichiro、Lugli Stefano、Tamenori Yusuke、Ogawa Nanako O.、Jim?nez-Espejo Francisco J.、Isaji Yuta、Roveri Marco、Manzi Vinicio、Kawahata Hodaka、Ohkouchi Naohiko
    • 雑誌名

      Geochemistry, Geophysics, Geosystems

      巻: 17 ページ: 1383~1400

    • DOI

      10.1002/2015GC006233

    • 査読あり / 国際共著
  • [雑誌論文] The role of symbiotic algae in the formation of the coral polyp skeleton: 3-D morphological study based on X-ray microcomputed tomography2016

    • 著者名/発表者名
      Iwasaki Shinya、Inoue Mayuri、Suzuki Atsushi、Sasaki Osamu、Kano Harumasa、Iguchi Akira、Sakai Kazuhiko、Kawahata Hodaka
    • 雑誌名

      Geochemistry, Geophysics, Geosystems

      巻: 17 ページ: 3629~3637

    • DOI

      10.1002/2016GC006536

    • 査読あり / 国際共著
  • [学会発表] 北日本における過去6,700年間の温度変化と人類活動2016

    • 著者名/発表者名
      川幡 穂高、八田 良樹、羽生 淳子、吉田 明弘
    • 学会等名
      日本地球惑星科学連合大会
    • 国際学会
  • [学会発表] 北海道内浦湾海底コアの花粉分析データからみた 完新世中期の寒冷化2016

    • 著者名/発表者名
      吉田 明弘、川幡 穂高、羽生 淳子
    • 学会等名
      日本地球惑星科学連合大会
    • 国際学会
  • [学会発表] 塩田バイオマット内の炭素・硫黄循環が高塩海水の化学組成に与える影響2016

    • 著者名/発表者名
      伊左治雄太、川幡穂高、黒田潤一郎、吉村寿紘、小川奈々子、鈴木淳、渋谷岳造、Francis J. Jimenez-Espejo、Stefano Lugli、Vinicio Manzi、Marco Roveri、大河内直彦
    • 学会等名
      日本地球惑星科学連合大会
    • 国際学会

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公開日: 2018-12-17  

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