研究課題
東京湾のコアについて堆積速度を評価した.現在東京湾に流入する代表河川には,江戸川,中川,荒川,隅田川,多摩川,鶴見川などがある.貝塚ら(1993)は現在の利根川の総流量と,利根川から分水し東京湾に流入している江戸川の総流量との比較から,利根川東遷後はそれ以前に比べて河川流量だけで約42%の減少があったと推測している.本結果では少なくとも1707年の宝永火山の噴火前後で約30%の堆積速度増加が見られた.東京湾においてアルケノン分析を行うことで過去約1400年間における古水温および東京湾周辺の陸域環境の復元を試みた.その結果,東日本において気温変動が観察された.特に江戸時代に入った1600年頃には著しい寒冷化が見られ,現在よりも0.5~1℃の気温低下があった.明治以降の統計データの利用できる範囲で水稲の収量と気候の関係を調べた:グループ1(北東北以北:北海道,青森,岩手,宮城)は平均気温が20℃前後の地域で,水稲の限界値に近い場所である.降温時と昇温時で収量の増減率に違いがみられ,昇温に関しては他地域と同じような収量の変化が見られるが,降温に関しては1℃につき17~25%の極端な減少率を示した.閾値は20℃として気温に関して最も収量の変化が如実に現れた.このことから寒冷な地域では降温の影響を最も受けやすく,しかもその被害がすぐでることが示唆された.グループ2(南東北: 秋田,山形,福島,茨城,新潟)は平均気温が22℃前後の地域である.グループ1に対し,増減率が穏やかである.グループ3(西日本:岡山,広島)は平均気温25℃前後の地域である.戦前戦後で温度変化に対する収量の変動に差がみられたことから,戦前においては気温以外の要素が,戦後においては気温が収量の増減に関係していると考えられる.
平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
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Geochimica et Cosmochimica Acta
巻: 235 ページ: 76-88
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Scientific Report
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