研究課題
沖縄近海に生息する現生放散虫29種について,生体画像,殻の透過顕微鏡・電子顕微鏡画像を添えたカタログを公表した。新潟県糸魚川地域の礫岩中の珪質岩礫からシルル紀の放散虫化石を検出し,報告した。イタリアPizzo Mondelloセクションの石灰岩を対象としたSr同位体に関する研究からは、三畳紀ノーリアン前期/中期境界を境にして、急激に同位体比が上昇することがわかった。このことは、シメリアン大陸地塊の衝突とPaleo-Tethysの収束イベントを表している可能性がある。中新世~更新世の地中海堆積物のOs同位体比を測定し,地中海と大西洋の間の海水交換の歴史を明らかにした。2014年のIODP航海による南シナ海の堆積物に関してもOs同位体分析を進め,海洋底拡大に伴う火成活動によってOs同位体比が変動することが確認された。一方,炭酸塩試料が海水のOs同位体比を復元する目的に適するかどうかを確認するため,標準試料JLs-1や現世のサンゴについて,リーチング実験を進め,砕屑物と炭酸塩では異なるOs同位体比を示すことを確認し,それを考慮した分析手順を組み立てる必要性を明らかにした。白亜紀の海底堆積物のOs同位体比に基づいて巨大火成岩岩石区の噴火と海洋無酸素事変の関連を検討した先行研究をレビューした。天体衝突に関しては,従来の天体衝突の数値計算コードに,高温高圧時の H2O の状態方程式を組み込み,H2Oの物理的な振る舞いを正確に記述できるものに改良したことである。その結果,海洋衝突など地球表層への天体衝突による物質の飛散過程を,精度よく再現することが可能となった。さらに,地上に存在する衝突クレータを,膨大な画像(ビッグデータ)から効率よく認識するデータ解析手法を構築した。これによって,地質記録にあるが,衝突クレータが見つかっていない衝突イベントの特定・因果関係の解明が進むことが期待される。
2: おおむね順調に進展している
チベットの珪質岩セクションにおいて古第三紀放散虫の検討を行い,Lychnocanium属などの3新種を含む放散虫群集を記載した。日本の中古生代遠洋性堆積物の放散虫層序の検討を継続している。イタリアのセクションにおける下部白亜系の放散虫生層序の検討を開始した。さらに,岐阜県坂祝町に分布する美濃帯の三畳紀後期~ジュラ紀前期の層状チャートおよび,Pizzo Mondelloセクションの上部三畳系遠洋性石灰岩を対象に研究を行った。今後美濃帯の同時代セクションを対象にOs同位体比を検討することで、Sr同位体比の結果と同様の上昇が捉えられる可能性がある。さらに,岩手県岩泉地域のP-T境界付近の地層に関し,岩石を連続的に採取した。犬山地域から保存状態の良い三畳紀の連続的試料を採取し,有機炭素同位体の分析を終えた。新生代の海水のOs同位体比変動復元のため,国際深海掘削計画(ODP)コアのリクエストを行い,堆積物などのサンプリングによって,研究用試料を入手した。すでに数試料のOs同位体分析を完了した。また,ロードハウ海台の白亜紀-古第三紀堆積物のオスミウム同位体比を測定し,K-Pg境界層を認定した。一昨年度までに採取してきたカンブリア紀初期及びジュラ紀前期の岩石を用いてOs同位体比測定を行った。いくつかの岩石試料に関して,放射壊変分を差し引いたOs同位体比初期値が負の値を取り,これは当時の海水の値としては低すぎる値であった。このため岩石試料中のReとOsの挙動が乖離しているという問題がないか確認を行う必要がある。これは古い堆積物の分析を行う際,あるいは,他機関のデータを解釈する際に重要なデータである。さらに検討を進め,次年度に論文としてまとめる予定である。その他,入手した試料の微化石解析,化学組成分析,Os同位体分析は順調に進んでおり,次年度に順次論文としてまとめる予定である。
Jurassic/Cretaceous境界のGSSP策定を意識した,同層周辺の放散虫バイオイベントを捉える。高知コアセンターでODPサンプルを採取して,Jurassic/Cretaceous境界付近を集中的に検討する。さらに,イタリアのセクションについても同層準を検討する。また,四国秩父帯で新たに発見できたT-J境界チャート層の生層序学的・同位体層序学的検討を深める。それによって,さらに下位層準のNorian-Rhaetianまでをカバーできる可能性が高い。これに加え,EUまたはニュージーランドのJurassicとTriassic chert層の検討を進める。上記の化石層序,地質環境の詳細の検討を進めた後に,キーとなる層序に関してはOs同位体組成の分析を進める。後期三畳紀のカーニアンとよばれる時代では、汎世界的な湿潤化イベント(Carnian Pluvial Event)が知られており、この原因としてパンサラサ海遠洋域で起こった大規模な火山活動が注目されている。今年度は、美濃帯の上部三畳系(カーニアン)層状チャートを対象に、Os同位体分析を行い、この時代の大規模なプレート内火成活動について明らかにする。また,新たにOAE1bのオスミウム同位体比変動を調べる.このための試料採取をイタリアで行う。さらに,IODP Exp. 369に参加・乗船し,白亜紀堆積物のOs同位体比を復元するための試料を得る。高精度のRe-Os同位体分析技術を利用し,Re-Osアイソクロン法を利用した南中国初期カンブリア系地層への年代制約した結果の論文化を進める。また,ジュラ紀トアルシアン無酸素事変時の海水Os同位体比変動の解明のため,論文化に必要なデータを適宜補完する。火成活動,および,隕石落下により放出された物質が地球環境に与える影響についてのモデリング,数値シミュレーシヨンを進める。
すべて 2017 2016 その他
すべて 国際共同研究 (5件) 雑誌論文 (39件) (うち国際共著 14件、 査読あり 35件、 オープンアクセス 18件、 謝辞記載あり 17件) 学会発表 (97件) (うち国際学会 42件、 招待講演 9件)
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