研究課題
若狭湾沖水深845mで採取されたWB6コアの年代モデルを更に精密化するために,堆積物の9層準から浮遊性有孔虫化石を拾い出し,米国のウッズホール海洋研究所に放射性炭素加速器質量分析を依頼した.また,昨年度に引き続き,浮遊性有孔虫Globigerina bulloidesの酸素炭素同位体比,Mg/Caを分析し表層水温の千年スケール変動を復元した.さらに,海洋生産変動を復元するために,全有機炭素含有量(TOC)を分析した.放射性炭素分析結果を基に,過去4万6千年間の年代モデルを構築した.結果としてWB6コアは約12cm/kyrの堆積速度で安定的に堆積していたことが明らかになった.表層水温は3~8℃の復元値を示し,TOC含有量が高い時期に高水温であった.この変動は,グリーンランド氷床コアや中国石筍などの酸素同位体比とよく似た時間スケールであり,日本海南部の表層水温,生物生産が激しく変化していたことが明らかになった.花粉分析は、水月湖の3~5万年前の層準からおよそ100サンプルに対して実施した。その結果、いわゆるD-Oサイクルに相当する1000年スケールの変動は、存在するものの振幅がきわめて小さいこと、それに対し、いわゆる歳差運動に対応する温度と降水量の変動は大きいことが確認された。火山灰分析は、水月湖の完新世の層準について、マイクロテフラの分析を完了した。その結果、これまで水月湖から報告されていなかった火山灰が、18層発見された。これらはいずれも、水月湖の年代モデルによって誤差数年から数十年の精度で年代が制約されていることから、日本および周辺地域の火山灰対比と年代決定に有用である。また、とくに深度226cmからは、10世紀の白頭山噴火に由来する火山灰層が見つかった。これにより、グリーンランドと水月湖が火山灰対比できる可能性を、はじめて実証的に示すことに成功した。
29年度が最終年度であるため、記入しない。
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