研究実績の概要 |
本年度は,昨年度までに開発した湿度制御装置を組み込んだ摩擦試験機によって,粘土鉱物の摩擦実験を行った。試料としては,イオン交換したCa型とNa型のモンモリナイトを準備し,異なる湿度条件で実験を行った。その結果,NaモンモリロナイトとCaモンモリロナイトともに、湿度が増加するのに伴って摩擦係数が減少する傾向を示した。湿度 10 %ではNaモンモリロナイトが0.33、Caモンモリロナイトが0.25なのに対して、湿度90 %ではNaモンモリロナイトが0.062、Caモンモリロナイトが0.037であった。また、同じ湿度では常に、CaモンモリロナイトよりもNaモンモリロナイトのほうが高い摩擦係数を示した。CaモンモリロナイトがNaモンモリロナイトよりも高い摩擦強度を示す傾向は、Behnsen and Faulkner(2013)と同様である。彼らによれば、水和エネルギーが小さいほど層間の距離が近く結合力が強まるため、Ca2+よりも水和エネルギーの小さいNa+を層間にもつNaモンモリロナイトのほうが高い摩擦強度を示す。湿度の増加に伴って摩擦係数が下がる傾向は、水和状態を変化させた先行研究(Bird, 1984; Ikari et al., 2007)と調和的である。水和に伴う摩擦係数の低下を説明する主なメカニズムとして、層間の膨潤に原因を求める説(Bird, 1984)と粒子間の膨潤に原因を求める説(Moore and Lockner, 2007)がある。今後は水和によって粘土鉱物の摩擦係数が下がるメカニズムについて検証する予定である。
|