研究課題
海嶺と島弧でおこるマグマ活動と元素分別を解明するため玄武岩に含まれるカンラン石メルト包有物の主成分・微量成分化学組成とSr-Pb同位体組成を測定する.平成27年度はメルト包有物中のPb同位体組成を正確に測定するため,ICP質量分析装置に10^13Ω電流増幅器ならびにカレントアンプを装着して装置の改造・高感度化を実施した.さらに,増幅器の調整と基礎特性の把握を実施した.また,レーザーアブレーション装置を装着した実分析におけるデータ精度の確認と,精密分析のためのデータ補正手法の考案を行った.その結果,従前の分析法に比べて測定精度を2-3倍に向上することが可能になり,成果を国際誌に投稿・公表した.あわせて,海嶺における断熱融解の熱力学・岩石学・地球化学モデル,Ocean Basalt Simulator ver.1を開発し,国際誌にモデル計算コードとアプリケーションについて公表した.本論文では,海嶺ならびに海洋島の代表的な岩石化学組成から,そのマグマの生成条件を算定することに成功した.その解析結果も同論文であわせて公表を行った.論文は,オープンアクセスとして広く閲覧できるようにした.さらに,岩石の全岩分析によって,日本海海洋地殻ならびに太平洋プレート海洋地殻を形成する玄武岩の化学組成を海洋コア試料を使って明らかにして,その成因について考察を行ない,国際誌に2編の論文を公表した.ここでは,太平洋プレートと日本海の1億6000万年前から1500万年前に形成された海洋地殻の生成条件と期限物質を特定した.
1: 当初の計画以上に進展している
目的の1番目として挙げた,Sr-Pb局所分析の主体をなす,ICP質量分析装置の改造が成功裏に終了し,かつPb同位体精密分析手法を確立して,国際誌に成果を公表した.目的の2番目として挙げた,玄武岩の分析では,太平洋プレート・日本海海洋地殻における玄武岩の分析からそれらの成因を議論し,国際誌に2編の論文を公表した.目的の3番目に掲げたマントル融解のフォワードモデルの開発を終了し,国際誌に公表した.いずれの項目も論文公表まで見るべき成果が挙がり,当初の予定以上に進展していると判断される.
初年度で確立した微小領域分析をSr同位体あるいは他の同位体組成分析に展開する.火山岩の分析では,海洋島・島弧玄武岩の試料採取・調整を実施し,全岩分析の推進と,かんらんせきの抽出を進める.マントル融解の数値モデルは,そのアプリケーションを展開するため,既存の分析結果ならびにグローバルデータベースに基づくシミュレーション計算を実施する.これらを統合してより広域の島弧・海嶺マグマ活動の特性を解明する.
すべて 2015
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 5件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 4件、 招待講演 1件)
Geochemistry Geophysics Geosystems
巻: 16 ページ: 267-300
10.1002/2014GC005606
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Journal of Analytical Atomic Spectrometry
巻: 30 ページ: 515-524
10.1039/C5JA00374A
巻: 16 ページ: 2147-2174
10.1002/2015GC005854