研究課題
【1】島弧・海嶺・海洋島玄武岩の試料採取および試料調整:平成28年度に採取した玄武岩試料から石基ガラスとカンラン石メルト包有物を分離し,それらの分析を継続して実施した.その分析に際して,レーザーアブレーションICP質量分析法の測定精度を飛躍的に向上する紫外線フェムト秒レーザー光学系を開発し,国際誌にその成果を公表した.さらにその分析法を用いて単一のメルト包有物から主成分・微量成分・鉛同位体組成を分析に成功し,論文を国際誌に公表した.ガラスとメルト包有物の分析は継続して進行中である.【2】海嶺-海洋島の岩石学的フォワードモデルの開発:平成28年度にその実用性を検討した海嶺-海洋島の岩石学的フォワードモデルを用い,海嶺玄武岩が地球史マントルの元素分別に与える影響について検討を加え,地球史35億年間のマントルの熱史・同位体進化史について計算を実施し,国際誌に論文が公表された.論文はエディターによるハイライト論文推薦を受け,当該国際誌の年間トップダウンロード4位(1698件)になった.【3】島弧-マントルリサイクリングの岩石学的フォワードモデルの開発:平成28年度に公表した島弧-マントルリサイクリングの岩石学的フォワードモデルを用いた地球史35億年のリサイクリング物質の同位体進化とマントル富化成分の同位体進化史に関する公表論文が,国際誌年間トップダウンロード7位(1477件)となった.さらに島弧火山岩の化学組成を推定する数値フォワードモデルを改良し,新しい汎用ソフトウエア(Arc Basalt Simulator version 5)を開発し,国際誌に公表した.そのほか,伊豆弧の酸性火山岩による地殻形成の特性,海山の衝突によって発生するマグマ活動を解明し,国際誌に論文を公表した.
1: 当初の計画以上に進展している
研究期間5年のうちの3年目であるが,本研究計画全体の2大目的の1つである,「地球史におけるマントル富化成分の成因と進化に関する,島弧物質収支の役割」についてモデル計算法をさらに改良し,国際誌に公表した.さらに,「海嶺マグマ作用がマントル進化に果たす役割」を解明し,国際誌に論文を公表した.論文はエディターによるハイライト論文推薦を受けるなどして研究コミュニティの関心をひいた.分析手法に関しては,分析装置のハードウェアをさらに開発し,より効率的で高精度な実試料の分析を進めている.当初計画よりも速やかに進展していると評価できる.
開発が進んだした分析手法を用いて,引き続きガラスやカンラン石メルト包有物試料の分析を進めるとともに,地球史における火山岩の地球化学データベースを整備し,改良したフォワードモデルを使って島弧や海嶺における元素分別とマントル進化モデルの精密化を図る.さらに地球史35億年におけるマントルの熱史・富化・枯渇成分マントル進化史と,島弧並びに海嶺の役割について,包括的に議論した論文を執筆,その論文の国際誌への公表をめざす.
すべて 2017 その他
すべて 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 5件、 査読あり 6件、 オープンアクセス 5件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 3件、 招待講演 2件) 備考 (1件)
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