研究課題/領域番号 |
15H02149
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
高橋 嘉夫 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 教授 (10304396)
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研究分担者 |
飯塚 毅 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 講師 (70614569)
大野 剛 学習院大学, 理学部, 准教授 (40452007)
小暮 敏博 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 教授 (50282728)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 同位体比 / XAFS分析 / 微量元素 / 亜鉛 / ゲルマニウム |
研究実績の概要 |
本研究では、地球の様々な系(結晶-メルト系、水-固液界面系など)での元素の分配を化学種解明に基づいて解釈し、新たな地球化学反応や同位体分別系を見出すことで、新しい地球化学的概念や手法を確立することを目指す。このようなアプローチは、分子地球化学(ボトムアップ型の地球化学)的な研究と呼ぶことができ、原子分子の情報に基づいてマクロな物質循環や地球進化の知見を得るという新しい地球化学の方向性を示すものである。このような発想に基いて、平成27-28年度は以下の2件の研究を進めた。 (1)火山岩中の石基と斑晶の間での元素の分配を調べ、配位数が変化する元素について化学種と同位体比を測定し、配位数変化に伴う同位体比の変動を調べた。特に亜鉛について、石基と斑晶の亜鉛の化学種を調べたところ、斑晶(オリビン)中では6配位の亜鉛が、石基中では4配位をとりやすいことが分かった。その結果から、亜鉛は石基中で重い同位体比を示す可能性が高い。そこで、それを調べるために、鉱物を溶解し、亜鉛を分離するカラム分離の手法を確立した。これらに基づいて、実際の試料中の亜鉛の分離を進め、MC-ICPMSによる亜鉛同位体比の測定を行う計画である。 (2)海洋における元素の固液分配を支配する吸着反応について、これまでの我々の研究から、Moの場合、モリブデン酸から吸着態に変化する際に、4配位から6配位への配位数変化を伴う場合に、大きな同位体分別が起きることが分かっている。このことに基いて、同様の配位数変化を示す系を探索したところ、ゲルマニウムイオンでそのような変化が起きることを示唆する結果を得た。特にCeO2に吸着する際に配位数変化が生じることがXAFS分析より分かったので、この系での固液両相でのゲルマニウム同位体比を今後測定する計画である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上記で示した通り、当初計画にある火山岩中の斑晶-石基間の亜鉛および固液界面系でのゲルマニウムについて、両相で配位数が変化する現象を見つけた。このことに基づいて、固液両相のこれらの元素の同位体比を測定するために、カラム分離による両元素の単離法を確立した。これらの結果や手法の確立に基づき、今年度は実際に同位体比を測定する予定であり、当初計画通り本研究は進展している。
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今後の研究の推進方策 |
既に述べた通り、本研究の当初計画にある火山岩中の斑晶-石基間の亜鉛および固液界面系でのゲルマニウムについて、XAFS法(火山岩についてはマイクロXRF-XAFS法も利用)による化学種分析により、両相で亜鉛(斑晶-石基系)やゲルマニウム(CeO2-水系)について、配位数が変化する現象を見つけた。このことに基づいて、固液両相のこれらの元素の同位体比を測定するために、カラム分離による両元素の単離法を確立した。これらの結果や手法の確立は、予定通り進んでいる。そのため、今年度は実際に同位体比を測定する予定であり、当初計画通り本研究は進展している。この同位体比の分析についても、既にMC-ICPMS法による分析法を確立しつつあるため、これらの実験を予定通り進められる見込みである。
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