研究課題
平成29年度は、Mn酸化物に対するMoの吸着構造とそれに伴うMoの同位体分別の実験結果を合理的に解釈できる吸着構造モデルを検討するために、量子化学計算を行い、Moが大きな同位体分別を起こす元素的な性質について考察を行った。本研究で提案する吸着構造モデルは、単量体であってもポリモリブデン酸に見られる、末端酸素との短い結合Mo=Oと、そのtrans位の長いMo…O結合を持った歪んだ八面体構造をとる。これらの結合距離はEXAFS解析から報告されているMo-O距離と良い一致を示した。また、この構造を用いて見積もられた吸着に伴う同位体分別の値は1.79‰となり、実験値を良く再現した。この大きな同位体分別は、溶液中では四面体構造のMoがマンガン酸化物への吸着によって歪んだ八面体構造へと変化することが原因と考えられている。歪んだ八面体吸着構造に見られる短い結合(Mo=O)のtrans位の結合が長くなる原因は、trans影響として知られており、trans位にある2つの配位子が中心金属のd軌道を共有することに起因する。このtrans影響はMo(VI)などのd0電子配置の時に最も大きくなる。さらに、d0, d10電子配置の金属(イオン)の酸化物など大きな配位子を持つ化合物の構造は、結晶場の安定化が殆どないため、配位子間の反発が構造決定の主要因となり、四面体構造を取る。また、金属錯体の配位数は中心金属のイオン半径に比例し、その構造を規定する。6族元素Cr(VI), Mo(VI)およびW(VI)のイオン半径(6配位)は0.44 A, 0.59 Aおよび0.60 Aであり、MoおよびWのマンガン酸化物に対する吸着構造は6配位であり、一方で、Crは4配位のまま鉄水酸化鉱物に吸着する。従って、Mo同位体分別の要因は、Mo(VI)がd0電子配置と適切なイオン半径を持つことに起因することが示唆された。
29年度が最終年度であるため、記入しない。
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