研究課題/領域番号 |
15H02164
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
戸部 義人 大阪大学, 基礎工学研究科, 教授 (60127264)
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研究分担者 |
廣瀬 敬治 大阪大学, 基礎工学研究科, 准教授 (10252628)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 二次元ポリマー / 固液界面 / 気液界面 / 自己集合単分子膜 / 芳香族化合物 / 一重項ジラジカル / 開殻性分子 |
研究実績の概要 |
(1)開殻性一重項分子 1-1.テトラシクロペンタテトラフェニレン(TCPTP)の金属還元種の生成と同定:TCPTPのメシチル誘導体の還元で生成するジアニオンおよびテトラアニオンの分光学的調査から、アヌレン内アヌレン構造の形成を検証した。海外との共同研究によりジアニオンのアルカリ金属塩の結晶構造解析を行った。シリルエチニル誘導体も合成し結晶状態で二量体構造をとることを見出した。連携研究者との共同研究により物性に関する理論的研究を行った。 1-2.キラルなインダセノジフルオレン(IDF)の合成と物性の解明:IDFを構成する二つの合成ブロックのうち、中心の六員環部分の合成を達成し、末端の芳香環部分も完成に近づいた。連携研究者と物性の理論的研究も開始した。 1-3.ヘキサシクロペンタヘキサメタフェニレン(HCPHMP)の合成:予定の方法では合成困難であることが判明したので、大環状芳香族化合物を合成するための一般的な方法の開拓に取り組んだ。そのため[12]サーキュレンを目的物とした合成を開始した。 (2)二次元ポリマー 2-1.固液界面における自己集合単分子膜の利用:グラファイトと有機溶媒の界面において反応性部位をもつアルキル置換デヒドロベンゾ[12]アヌレン(DBA)の多孔性単分子膜の形成を検討した。通常の条件では多孔性膜が形成されなかったが、コロネンを共吸着させたときに目的の多孔性構造が形成された。一方、アミノ基をもつDBAが形成する多孔性単分子膜とホルミル基をもつゲスト分子間のイミン結合生成により二次元ポリマーが合成できることを確認した。 2-2.気液界面における自己集合単分子膜の利用:末端ビニル基をもつモノマーから得られるポリマーの構造の均一性が不確かであるため、末端にケイ皮酸エステル部位を導入し、より反応性が高く安定なLangmuir膜を形成すると期待されるモノマーを合成した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1)開殻性一重項分子 テトラシクロペンタテトラフェニレン(TCPTP)およびその金属還元種の研究は、特に結晶構造に関して予想以上の優れた成果が得られている。またシリルエチニル基を有するTCPTP誘導体の中性状態の構造はテトララジカル性の開殻状態を創出するための新原理を導く可能性があり、連携研究者による理論的側面と合わせて予想を上回る成果が得られている。キラルなインダセノジフルオレン(IDF)の合成については、合成ルートの見直しを行ったが、順調に進行しており、29年度中には合成が達成できるものと期待される。ヘキサシクロペンタヘキサメタフェニレン(HCPHMP)の合成は非常に困難であるため、迂回路をとっている。 (2)二次元ポリマー 固液界面における自己集合単分子膜の利用については、多孔性単分子膜の形成までは達成できたが反応性不飽和官能基間の反応が未達成である。一方で、アミンとアルデヒドとの縮合反応を用いる系については、サイズは大きくないものの二次元ポリマーの合成が達成された。気液界面における自己集合単分子膜の利用については、より高反応性で安定な膜を形成するモノマーが合成できた。 予定以上の成果が得られているテーマと進捗が遅れているものがあるが、それらを考え合わせるとおおむね順調に進展していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
(1)開殻性一重項分子 テトラシクロペンタテトラフェニレン(TCPTP)およびその金属還元種の研究については、実験データがかなり揃ったので、分光学データと結晶構造の議論に基づいた論文作成を連携研究者との国際共同研究により行う。またシリルエチニル基を有するTCPTP誘導体の中性状態の構造について、三次元構造に基づくテトララジカル性の開殻状態の実験的検証と、連携研究者による理論的研究を行う。キラルなインダセノジフルオレン(IDF)の合成については、29年度中に合成を達成する。ヘキサシクロペンタヘキサメタフェニレン(HCPHMP)の合成に関連して[12]サーキュレンの合成を進める予定である。
(2)二次元ポリマー 固液界面における自己集合単分子膜の利用については、多孔性単分子膜が形成される条件がわかったので、不飽和官能基間の反応について海外の連携研究者との共同研究のもとにさらに検討を進める。アミンとアルデヒドとの縮合反応を用いる系については、二次元ポリマーの構造の均一性に関して、走査型トンネル顕微鏡や分光学的手法に基づいて調査する。気液界面における自己集合単分子膜の利用については、ケイ皮産エステル部位を有するモノマーが合成できたので、Langmuir膜の形成とその光照射による架橋反応を行い、二次元ポリマーを合成する。
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