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2016 年度 実績報告書

微量元素高速時間分解X線吸収分光の開発と機能性材料への展開

研究課題

研究課題/領域番号 15H02173
研究機関分子科学研究所

研究代表者

横山 利彦  分子科学研究所, 物質分子科学研究領域, 教授 (20200917)

研究分担者 高木 康多  分子科学研究所, 物質分子科学研究領域, 助教 (30442982)
上村 洋平  分子科学研究所, 物質分子科学研究領域, 助教 (30723647)
研究期間 (年度) 2015-04-01 – 2018-03-31
キーワード複合物性 / X線吸収分光
研究実績の概要

本研究は、これまで報告のなかった多成分・微量成分に対するポンプ-プローブ高速時間分解X線吸収分光計測を、世界位先駆けて実現し、新規光電極材料や熱記録素子などの励起状態局所構造の解析を行うものである。従来のポンプ-プローブ高速時間分解X線吸収分光法では、放射光とレーザーの同期の問題からエネルギー分解能に乏しく時間分解能の高いX線検出器の利用を余儀なくされており、研究対象が高濃度金属錯体などに限定されていたが、我が国の世界唯一のシングルバンチ放射光X線源PF-ARを活用することで、時間分解能に乏しく高エネルギー分解能を有する蛍光X線検出器が利用可能となり、迅速かつ用意に高速時間分解(約100ps)微量成分X線吸収分光計測が実現できる。極めて広い科学技術分野への応用が期待できる分光法となりえる。
平成28年度は、高エネルギー分解能を有するシリコンドリフト検出器(SDD)からの信号計測に用いるデジタルパルスプロセッサを改良し、レーザーのON/OFFに同期した蛍光X線の検出を試みた。この改良により、多素子SDDからの同時信号入力が可能となり、S/N比の高い良好なスペクトルを取得できるようになった。本課題の当初目的は十分達成できたといえる。
一方、上記の装置開発に並行して、光触媒BiVO4の光励起後の500fs, 100psの時間分解Bi-L3吸収端X線吸収測定を、それぞれX線自由電子レーザーSACLAとシングルバンチ放射光施設PF-ARにおいて行った。この試料は高濃度のためエネルギー分解能のないフォトダイオードや光電子増倍管の利用が可能であった。系統的な測定の結果、励起状態におけるBi周りの構造変化を捉えることに成功し、現在詳細解析を進めているところである。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

平成28年度は、シリコンドリフト検出器(SDD)に使用するデジタルプロセッサ(DSP)の改良を行った。これまでは、レーザーON/OFFに同期した信号を取得するのにそれぞれ1つずつDSP基板を使用していたが、この改良により1つの基板でレーザーのON/OFFに同期した信号を得ることができるようになった。これまでよりもより多くの素子を有する多素子SDDを用いることが可能となり、短時間で質の高いスペクトルを取得できるようになった。当初予定通りではあるが、本課題の当初目的は既に十分達成できたといえる。しかしながら、平成28年度後半(2016年10月-2017年3月)は放射光施設PF-ARの運転が長期停止され、これ以上の実験を進展させることができなかった。X線自由電子レーザーSACLAを用いた実験は行えたので、本装置の応用ではないが、光触媒BiVO4の光励起後の500fsの時間分解Bi-L3吸収端X線吸収測定(高濃度のためエネルギー分解能のないフォトダイオードや光電子増倍管を利用)が行え、現在詳細解析を進めているところである。以上から、おおむね順調に進展している、と判断した。

今後の研究の推進方策

本年度は最終年度であり、システムは平成28年度までに立ち上がったので、これを用いて応用的研究を推進する。金属・絶縁体転移を示すWドープVO2の光誘起相転移の追跡、Pt/TiO2光触媒の光励起後のPtナノ粒子の構造追跡、光触媒BiVO4の励起状態の観測などを行う予定である。光触媒BiVO4は上述の通り平成28年度に研究を開始しており、これまでに、Bi周りの変化について、シンクロトロン放射光によるサブナノ~ナノ秒オーダーの時間領域の変化と、X線自由電子レーザーを用いたサブピコ~ピコ秒オーダーの変化を捉えることに成功している(正孔ポーラロン状態の構造解析)。一方で、伝導帯を形成しているV(電子ポーラロン)の励起電子状態や構造についてはまだ検討していない。V K吸収端の蛍光X線は吸収されやすいため有効なフィルタが存在しないので、本システムを用いたエネルギー分解能をもつSDD検出器が有効となる。DSPの改良により、PF-ARだけでなくSPring-8においても本システムを用いたポンプ-プローブXAFS実験を行える可能性が出てきた。PF-ARは本年度も運転時間に限りがあるため、秋以降にSPring-8での実験も含めて検討している。

  • 研究成果

    (13件)

すべて 2017 2016 その他

すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件) 図書 (2件) 備考 (3件)

  • [国際共同研究] レンヌ第1大学(フランス)

    • 国名
      フランス
    • 外国機関名
      レンヌ第1大学
  • [雑誌論文] SACLAによる光触媒の超高速時間分解XAFS研究2017

    • 著者名/発表者名
      上村 洋平, 脇坂 祐輝, 城戸 大貴, 高草木 達, 朝倉 清高, 丹羽 尉博
    • 雑誌名

      日本結晶学会誌

      巻: 59 ページ: 24-28

    • DOI

      http://doi.org/10.5940/jcrsj.59.24

    • 査読あり
  • [学会発表] 鉄系スピンクロスオーバー錯体の局所構造解析2017

    • 著者名/発表者名
      上村洋平, 小出明広, 横山利彦, 高橋一志
    • 学会等名
      第6回名古屋大学シンクロトロン光研究センターシンポジウム
    • 発表場所
      名古屋大学(愛知県名古屋市)
    • 年月日
      2017-03-02
  • [学会発表] 超高速時間分解XAFSによる不均一触媒のメカニズムの研究2017

    • 著者名/発表者名
      上村洋平
    • 学会等名
      第30回日本放射光学会年会
    • 発表場所
      神戸芸術センター(兵庫県神戸市)
    • 年月日
      2017-01-07 – 2017-01-09
    • 招待講演
  • [学会発表] 強磁性体中における軽元素K-edge XMCDスペクトルの解析2017

    • 著者名/発表者名
      小出明広、横山利彦
    • 学会等名
      第30回日本放射光学会年会
    • 発表場所
      神戸芸術センター(兵庫県神戸市)
    • 年月日
      2017-01-07 – 2017-01-09
  • [学会発表] ポンプ-プローブXAFS法を用いた光触媒の励起状態観測2016

    • 著者名/発表者名
      上村洋平, 小出明広, 横山利彦, 城戸大貴, 脇坂祐輝, 高草木達, 大谷文章, 朝倉清高, 丹羽尉博, 野澤俊介, 足立伸一, 片山哲夫, 矢橋牧名, 岩瀬顕秀, 工藤昭彦
    • 学会等名
      第19回XAFS討論会
    • 発表場所
      名古屋大学(愛知県名古屋市)
    • 年月日
      2016-09-03 – 2016-09-05
  • [学会発表] 多重散乱理論を用いたCrO2におけるO K-edge XMCDの解析2016

    • 著者名/発表者名
      小出明広、横山利彦
    • 学会等名
      第19回XAFS討論会
    • 発表場所
      名古屋大学(愛知県名古屋市)
    • 年月日
      2016-09-03 – 2016-09-05
  • [学会発表] Photoexcited process of WO3 photocatalyst in femtoseconds to picoseconds region observed by time-resoled XAFS2016

    • 著者名/発表者名
      Y. Uemura, A. Koide, T. Yokoyama, D. Kido, Y. Wakisaka, S. Takakusagi, B. Ohtani, K. Asakura, Y. Niwa, S. Nozawa, T. Sato, K. Ichiyanagi, R. Fukaya, S. Adachi, T. Katayama, T. Togashi, S. Owada, K. Ogawa, M. Yabashi
    • 学会等名
      VUVX2016
    • 発表場所
      スイス連邦工科大学チューリッヒ校(スイス・チューリッヒ)
    • 年月日
      2016-07-03 – 2016-07-08
    • 国際学会
  • [図書] XAFS Techniques for Catalysis, Nanomaterials and Surfaces2017

    • 著者名/発表者名
      上村洋平、横山利彦他
    • 総ページ数
      556
    • 出版者
      Springer
  • [図書] X-ray and Neutron Techniques for Nanomaterials Characterization2016

    • 著者名/発表者名
      上村洋平他
    • 総ページ数
      830
    • 出版者
      Springer
  • [備考] 分子科学研究所物質分子科学研究領域電子構造研究部門横山グループ

    • URL

      http://msmd.ims.ac.jp/yokoyama_g/

  • [備考] 【プレスリリース】酸化タングステン光触媒の光キャリア超高速構造追跡に成功(横山グループら)

    • URL

      https://www.ims.ac.jp/news/2015/12/10_3344.html

  • [備考] 上村洋平助教が第21回日本放射光学会奨励賞を受賞

    • URL

      https://www.ims.ac.jp/news/2017/01/19_3609.html

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公開日: 2018-01-16  

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