本研究では、合成高分子における究極の課題であるモノマー配列制御に関して、ビニルモノマーを原料として用い、一分子ラジカル付加反応、ラジカル連鎖重合、ラジカル逐次重合などを駆使して、配列制御ビニルポリマーを構築することを目的としている。本年度は、(1)ラジカル連鎖重合と(2)ラジカル逐次重合に基づき、より高次のモノマー配列制御を引き続き検討した。また、(3)ラジカル付加反応により配列を組み込んだモノマーを、他の重合法を用いて高分子化の検討を行った。 (1)ラジカル連鎖重合による制御:オレフィン系モノマーとしてサビネンを用い、アクリル酸エステルやメタクリル酸エステルの共重合において、フルオロアルコールを用いることで、共重合性が向上し配列に影響を与えることを明らかとした。 (2)ラジカル逐次重合による制御:非共役の二重結合を2つ有するモノマーと、炭素―塩素結合を2つ有するモノマー間でのラジカル逐次重合により、高次の配列を有するビニルポリマーの合成を検討した結果、最高で11個の規則的なモノマー連鎖から成る配列制御ビニルポリマーの合成が可能であることが示された。 (3)一分子ラジカル付加と他の重合法による制御:二重結合を2つ有するジエンモノマーを合成し、非環状ジエンメタセシス重合に加え、ジエンモノマーを閉環メタセシス反応により環状オレフィンとし、開環メタセシス重合により、高分子量の配列制御ビニルポリマーの合成が可能なことが示された。また、新しい重合法としてチオール・エン反応を用いた重付加の取り組みを開始し、その可能性を明らかとした。
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