研究課題
パーフルオロアルキル(Rf)化合物のバルク物性を,分子の一次構造から予想可能にする``階層双極子アレー(SDA)モデル''を,我々は世界に先駆けて提案した.凝縮系の新しい階層構造となり得るこのモデルにより,従来の「Rf基=疎水性」などの経験頼りだった従来のフッ素化学に,パラダイムシフトを与えると期待されている.SDAモデルをフッ素化学の学理として確立するためには,アトロプ異性をもつヘリックスの本質が反映される`分子ドメイン構造を「相転移」と関連付けて明らかにする必要がある.そこで本研究では,アトロプ異性分子ドメインを可視化できるラマン光学活性(ROA)測定装置を開発し,フッ素`科学'を学理として完成させることを目指した.ROAは従来,溶液での測定に用いることがほとんどで,固体試料への適用例はほとんどない.これは,ROAスペクトルを量子化学計算で裏付ける際に,試料が無配向であることが必要だからである.しかし,本研究のSDAパッキングを証明するには,固体での測定が不可欠である.本研究では,この固体試料上でのROA測定の実現から取り組んだ.その結果,励起光の集光位置を試料から少し離れた位置にすることで,安定した測定が可能になることをD, Lアラニンの結晶を用いて実証した.次いで,CF2基を9個含むパーフルオロアルキル鎖を含む化合物を2カ月かけて結晶化させ,得られた7つの結晶をROA装置で測定した.その結果,6つの右巻きと1つの左巻きドメインを明瞭に識別できた.同時にこれは,自己集合したSDAパッキングにはアキラルなものはないことを証明した.こうして,目標としていたSDA理論の重要な側面を,実験的に示すことに成功した.なお,内容はJ. Phys. Chem. A誌に公表し,表紙を飾る成果となった.また,実験を行った下赤助教は,この成果で日本分光学会の奨励賞を受賞した.
令和元年度が最終年度であるため、記入しない。
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