テフロンに代表される有機フッ素化合物は,広く日常的に利用されている.しかし,その機能の発現原理が長年不明で,このためフッ素は有害という偏った考え方に対峙することすらできなかった.有機フッ素化合物の分子構造による理解という,宿願を叶える初めての理論である階層双極子アレー(SDA)理論を実験的に検証するためたくさんの検討を重ねており,今回はパーフルオロアルキル化合物のアトロプ異性に着目し,分子の自己凝集が引き起こす光学活性をラマン光学活性(ROA)顕微鏡の開発により初めてとらえることに成功した.固体のROA測定自体,ほぼ前例がなく,またSDA理論を強力に支持する結果が得られた.
|