研究課題
生活習慣病に強相関する核酸メチル化を化学的手法で検出することを目指した。その達成には、超高感度であること、配列選択的であること、高効率であることなどが必要であり、そのためにオリジナルな化学プローブをオリジナルな化学反応をベースにして創出して、その高感度化を図ることによって生活習慣病をメチル基レベルで可視化する臨床応用可能な技術を包括的に開発するための研究を展開した。概要は次の通り。1. 腫瘍不均一性を解くためのDNA 反復配列に現れるメチル化の超高輝度検出:L-DNAを基本骨格としたLT-FISH法を開拓して、細胞内のわずかな核酸ターゲットをハイブリダーゼ―ションにより標識して可視化できる方法を得た。シングルローカスメチル化を検出するための機能を得た。2. 腫瘍術後診断を効率化するDNA 脱メチル化特異的反応生成物の超高性能分析:タングステン酸によるワンポット検出法や銅TEMPOによる簡易検出法を開拓した。さらにゲノム中の86万か所の標的に対してこれらの化学反応を行ってヒト脳から新規のヒドロキシメチルシトシン塩基を見つけ出すことができた。3. 肥満もしくはII 型糖尿病に直結するRNA メチル化に対する超高効率標識分子の設計:酵素によるm6A の認識に対して配列選択性を付与する。FTO のm6A 認識にはある程度の配列の好みがあるものの、その限りではなかった。標的mRNA の配列に相補的な核酸配列を効率的にFTOもしくはALKBH5に付与することによりm6Aの配列選択的標識が可能になるだろう。
1: 当初の計画以上に進展している
当初ヒドロキシメチルシトシンを検出するための化学反応を探索して見つけ出すことを目標にしていたが、タングステン酸によるワンポット検出法や銅TEMPOによる簡易検出法を開拓し、さらにゲノム中の86万か所の標的に対して反応を行ってヒト脳から新規のヒドロキシメチルシトシン塩基を見つけ出すことができた。当初予定していた化学反応の発見にとどまらず、ゲノムサイエンスにおける重大な発見にまで結びつけたことで、大きく研究が発展したと言える。
メチルシトシン検出のための高感度化反応に取り組んでいるが、LT-FISH法を開拓したのでこれを応用すればメチル化DNAの高感度検出の道筋にめどをつけることができる可能性が出てきたので、さらなる進捗を図る。研究協力者(臨床医)らと協力して、培養腫瘍細胞および腫瘍組織切片を用いて、連続反復配列・散在反復配列に対するMeFISH 実験を行う。メチル化検出感度についてのデータをフィードバックし、プローブの高感度化の改良を進める。MeFISH 実験から得られたイメージングデータに基づいて各細胞におけるメチル化量を解析し、腫瘍幹細胞を含む腫瘍組織の不均一性に関するデータ収集を進める。
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 謝辞記載あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件)
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