研究代表者は、生体のように自律的な機能を発現するゲル、すなわち刺激のon-off駆動によらず、心臓の拍動のように一定条件下で自発的に周期的リズム運動を行う新しい機能性ゲルの開発に取り組んできた。生体には閉じた化学反応回路が多く存在する。それを人工的に模倣したBelousov-Zhabotinsky(BZ)反応は代謝反応(TCA回路)の化学モデルでもあり、生体現象の中でもよく見られる時間リズムや空間パターンを自発的に生み出す化学振動反応としてよく知られている。サイクリックな反応ネットワークが自発的に構成され、触媒となる金属錯体が周期的な酸化還元振動を起こす。散逸構造を生み出す化学システムの代表的な例でもある。研究代表者は、このBZ反応をゲル内で引き起こしその化学エネルギーを力学エネルギーに変換する分子設計を行い、ゲルの周期的な膨潤収縮振動を生み出すことに成功した。初めてこの「自励振動ゲル」(selfoscillating gel)を報告し、以降系統的に研究を進めている。時空間機能を持つ4次元ソフトマテリアルとして新しい機能性ゲルの概念を提唱し具現化するとともに、1)自律駆動型の生体模倣ソフトアクチュエータ、2)自動物質輸送システム、3)自発的かつ周期的にレオロジー変化を示す機能性流体など、新たな自律機能性材料への応用展開を試みた。とくに本期間では、ゾルゲル転移を周期的に繰り返しながら前進する生体模倣ソフトマシン(人工アメーバ)を実現することができた。さらにその高分子合成法の確立とともに、自励振動機能を発現するための最適な分子設計を試みた。
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