研究課題/領域番号 |
15H02201
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
大谷 文章 北海道大学, 触媒科学研究所, 教授 (80176924)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | オゾン酸化 / 四価ロジウム / 可視光吸収 / 酸化チタン |
研究実績の概要 |
表面修飾や微粒子形成ではない真の意味で金属イオンがドープされた酸化チタン粉末の調製法を確立し,その構造特性をさまざまな手法で明らかにするとともに,可視光照射下において高い活性を示しつつ,長時間の使用や酸,塩基などの処理でも除去されることがない高い安定性をあわせもつ高性能可視光応答型光触媒の開発を行う.これらの新規光触媒によるさまざまな反応に対する解析結果にもとづいて「ビルトインレドックスメディエータ型2段階励起機構」というあたらしい光触媒作用の概念を確立するとともに,可視光照射による水の完全分解反応などに展開する. (1)酸化物粒子を形成させることなく高濃度のロジウムを酸化チタンの結晶格子中に導入する調製法を開発:照射された光がすべて吸収されると考えられる数パーセント程度のロジウムを,その酸化物を形成させることなく酸化チタンの結晶格子中に四価の状態で導入するために(a)オゾンや過酸化水素導入下で塩化ロジウム(III)―酸化チタン混合物を焼成する手法,(b)塩化チタン(IV)あるいは塩化チタン(III)水溶液中に塩化ロジウム(III)を溶解させ,酸化剤を導入してロジウムを酸化しながら加水分解,焼成する手法などの方法を企画したが,(a)の手法によってほぼ目的のドーピングができることを明らかにした.(2)ドーパントのロジウムの存在位置と状態をおもにX線光電子分光(XPS)法,粉末X線回折(XRD)法によって解析した.(3)光触媒反応中におけるロジウムの価数などの状態をその場光吸収測定するとともに,2波長照射下での作用スペクトル解析を行った.(4)空気中のアセトアルデヒドやトルエンなどの分解に対する活性評価と中間生成物の分析などの反応解析により反応機構の解明と反応条件の最適化をはかった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ロジウムを四価の状態で酸化チタンにドーピングするための実験手法はほぼ確立した.また,その存在状態の解析,光触媒活性の測定および反応機構の解析も当初の目標レベルに達している.
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今後の研究の推進方策 |
(1)高濃度ロジウムドーピング法の開発: 平成27年度に引き続いて,より高濃度のロジウムドーピングをめざすとともに,光触媒活性に対してもっとも適したドーピング量や条件を見いだす.さらに,高濃度ロジウムドープ酸化チタンの高効率,大量合成のための手法を開発する.(2)ドープされたロジウムの状態解析: 平成27年度に引き続いて,ドープされたロジウムの価数や分布状態,位置などを特定するための検討を行い,解析法を確立する.また,チタンイオンの価数の変化,とくに還元によるチタン(III)種の測定のために,研究代表者らが開発した二重励起光音響分光法を利用する予定である.粉末X線回折測定に要するX線源を消耗品費として確保した.(3)光触媒反応に有効な光波長の解析=ロジウムの状態のその場解析を含めた二重励起作用スペクトル測定: 平成27年度において確立した二重励起作用スペクトル測定法の装置に,平成27年度に導入ずみのマルチチャンネル分光器による拡散反射測定を付加して,光触媒活性の測定と同時に光触媒の吸収スペクトル変化をモニターして動作状態におけるロジウム(III)/ロジウム(IV)比などのロジウムの状態解析を行い,反応機構の解明をすすめる.(4)実用化条件下における活性の精密測定と反応機構解析: 光触媒の開発では実用化のための基礎研究も重要である.その意味で,本研究ではアセトアルデヒドやトルエンなどの空気中の微量有機化合物の分解(無機化)を中心として活性評価を行う.より効率的な活性評価と光触媒調製へのフィードバックのために,すでに別予算で導入ずみの自動測定が可能なガスクロマトグラフを用いる.また,既存の液体クロマトグラフやガスクロマトグラフ―質量分析計による酢酸,ギ酸あるいはホルムアルデヒドなどの中間体生成の有無を含めた生成物解析を行う.
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