(1)ロジウムドープ条件の精密化: 前年度までに開発してきた手法として,(a)ロジウム(III)をドーパント源として,オゾンを含む酸素気流下での焼成により,および,(b)ビスマス(V)化合物共存下での水熱反応により,ロジウム(IV)に酸化しながら酸化チタン結晶格子中に導入する手法についてその合成条件の最適化をはかるとともに,調製したロジウムドープ酸化チタンの諸物性と下記の光触媒活性を精密に測定した. (2)実用化条件下における活性の精密測定と反応機構解析: 光触媒の開発では実用化のための基礎研究も重要である.その意味で,本研究ではアセトアルデヒドやトルエンなどの空気中の微量有機化合物の分解(無機化)を中心として活性評価を行う.より効率的な活性評価と光触媒調製へのフィードバックのために,自動測定が可能なガスクロマトグラフを利用する.また,既存の液体クロマトグラフやガスクロマトグラフ―質量分析計による酢酸,ギ酸あるいはホルムアルデヒドなどの中間体生成の有無を含めた生成物解析を行った. (3)水分解反応系への展開: 酸化チタンの伝導帯の電子と価電子帯の正孔はそれぞれ水を還元,酸化して水素と酸素を発生することが可能であるため,今回の2段階励起機構によっても水の全分解が可能であると考えられる.実際には白金などの水素発生用の助触媒を担持させる必要があり,ドープしたロジウム種と白金が接触すると電子移動が起こる可能性がある.このため,いったんドープしたあとで,光触媒粉末表面をさらに酸化チタン層で被覆してから白金などの助触媒を担持させたものを調製して水分解系に適用をはかった.しかし,水素/酸素生成活性を保ちながら,両者の反応を抑制するための条件を決定するには至らなかった.
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