研究課題
ハロアルミネートイオン液体を用い、Al金属の析出・溶解を負極反応に、炭素電極でハロゲンの酸化吸着と還元脱離を正極反応に用いたアルミニウム蓄電池を開発する事が、本研究課題の目的である。そして、蓄電池としての性能、特に容量密度とエネルギー密度の向上を目指すためには、負極および正極反応のコントロールが重要となる。それぞれについて、反応条件ならびに電極材料の選択によって行う方法を開発する事を目的とする。2年目の今年度は、1)クロロアルミネートイオン液体の成分の構成比を変化させることによる、電極反応の変化、ならびに2)アルミニウム以外の金属イオンを溶解する事による電極反応の変化について調査した。1)については、イオン液体を構成するAlX3とImXの比率を変えることで、AlX4-とAl2X7-の比率が異なるハロアルミネートイオン液体を調製し、それぞれを電解液に用いてアルミニウムの析出・溶解と正極材料の酸化と還元を行い、電解液組成変化による電池活物質の充放電反応特性変化を調べた。AlX4-濃度が増え、Al2X7-濃度が低下すると、アルミニウム析出電位は負側にシフトし、これはネルンスト式を反映する結果であった。しかし、アルミニウム析出にはAl2X7-種の存在が不可欠ゆえ、電位シフトだけではなく電流も低減するため、電池としての充放電反応速度を低下させる。一方、炭素電極を正極に用いた電気化学反応においては、炭素層間へのイオン種の挿入と脱離が主反応であるため、電解質の成分変化の電極反応への影響は大きく無い。それらの結果より、充電速度を低下せずに起電力を大きくするのに適した電解液構成に関する情報を、収集する事ができた。2)については、マグネシウムイオンとタンタルイオンの添加効果について調査した。両イオンともにアルミニウム析出電位を負側にシフトさせ、ImXと同様な挙動であった。
1: 当初の計画以上に進展している
昨年度の研究計画として、「ハロアルミネートの成分比を変化させることによる負極特性変化」「ハロアルミネートの成分比の変化による正極特性変化」「負極と正極の接近に寄る電池反応の成分有効利用」を課題として挙げており、いずれも調査を完了して、より良好な電池特性を発言させる条件を明らかとした。加えて、次年度に計画していた他の金属イオンの添加による効果の調査についても、既に開始しており、その研究の方向性を明らかとした。よって、次年度の研究も滞りなく開始できる状況とする事ができており、当初の計画以上の進展であると言える。
負極反応については、金属イオン添加の効果ならびに、AlX4-を主とした電解液を用いた還元反応において、正極側で生成するAl2X7-種が負極付近に生成するようにセルをデザインする事により、電池反応が安全なAlX4-が主たるイオン液体でも行える状況を設計する。正極反応については、より充放電容量密度の向上を目指して、新たなる活物質の探索と電池反応の調査を行う。
すべて 2016
すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 4件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件)
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