研究課題/領域番号 |
15H02222
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
泰岡 顕治 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 教授 (40306874)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | クラスレート水和物 / 相平衡 / 分子シミュレーション / 分子動力学 |
研究実績の概要 |
クラスレート水和物は,水分子が作るかご状の構造の中にメタン等のゲスト分子が内包されてできている結晶であり,天然ガスの輸送,蓄熱,冷凍サイクルなど様々な熱工学分野での応用が期待されている.クラスレート水和物の相平衡条件はゲスト分子の種類によって大きく異なることが知られており,これらの応用においてはクラスレート水和物/ゲスト分子/水の熱力学的な相平衡条件を知ることが重要となる.これまで工学的利用のために,様々なゲスト分子について相平衡条件の取得実験が継続的に進められてきた.しかしながら,これらの研究には多くの時間とコストがかかってきた.本研究では,分子シミュレーションを用いて分子論的に相平衡条件を取得する手法を確立し,より簡便に相平衡条件を予測する方法を開発する.平成27年度は,2つのシミュレーションをそれぞれ行った.(1)クラスレート水和物/水/メタンの系において相平衡条件を決定するための分子動力学シミュレーションを行った.水分子モデルには水/氷の相平衡条件を再現することが知られているTIP4P/Iceを用い,NPH(粒子数,圧力,エンタルピーが一定の系)およびNVT(粒子数,体積,温度が一定の系)の2つのアンサンブルを用いて計算を行った.NVTの系においては,長時間のシミュレーションを行うことにより,相平衡条件を得られる可能性を見いだすことができた.一方,NPHの系においては,メタンの気相とクラスレート水和物の固相,水の液相の3相が混合していることにより圧力制御に問題がおき,相平衡条件を得ることが難しいことがわかった.(2)クラスレート水和物の中に充填するゲスト分子の割合を計算するためにギブスアンサンブルモンテカルロシミュレーションを行った.クレスレート水和物とメタンガスの2つの系を用意して計算を行うことで,様々な温度,圧力条件で充填率を計算することに成功した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2つのシミュレーションを計画していたが,両方とも順調に結果を得ている.特にギブスアンサンブルモンテカルロシミュレーションの計算については,結果を既に論文として公開した.分子動力学シミュレーションの計算については,やや計算時間がかかっているが,可能性を見いだすことには成功しており,順調に進展していると言える.
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度に引き続き2つのシミュレーションを行う.メタンをゲスト分子とする系が出来次第,エタン,プロパンについても同様の計算を行い,方法の検証を行う.また,ギブスアンサンブルモンテカルロシミュレーションについては,メタン/エタン混合系について充填率の計算を行う.
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