研究課題/領域番号 |
15H02233
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
佐藤 敏郎 信州大学, 学術研究院工学系, 教授 (50283239)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | パワーエレクトロニクス / DC-DCコンバータ / リアクトル・トランス / 鉄系メタルコンポジット鉄心材料 |
研究実績の概要 |
本研究は超高周波電力変換用鉄系メタルコンポジット鉄心材料とリアクトル・トランスの開発によって高効率と小型軽量を両立するSiC/GaNパワーエレクトロニクスの実現を目的に実施するものである。平成27年度の研究成果は以下のとおりである。 1.カルボニル鉄粉/エポキシコンポジット鉄心の体積抵抗率の増大を目的に、TEOS加水分解による鉄粉表面へのシリカ皮膜形成法を確立するとともに、間接材料を必要としない大気中熱酸化による高抵抗皮膜形成にも成功した。200℃-6時間熱処理鉄粉コンポジット鉄心は未処理粉を用いた場合に比べて体積抵抗率が1500倍の100Ω・mまで高くなることを明らかにした。また、カルボニル鉄粉の低保磁力に寄与するナノ結晶構造が240℃の大気中熱酸化においても安定的に維持され、コンポジット鉄心用鉄粉として優れた熱安定性を有することを明らかにした。熱酸化処理カルボニル鉄粉/エポキシコンポジット鉄心リアクトルのMHz帯のQ値は200以上の高い値を示し、未処理鉄粉を用いた場合の2倍以上、ベンチマークであるフェライト鉄心リアクトルに対しても4倍以上の高いQ値を示すことを明らかにした。 2.熱酸化処理鉄粉/エポキシコンポジット鉄心を用いた巻線内蔵表面実装型リアクトルを5V入力-1V出力GaNパワーデバイス1MHzスイッチングDC-DCコンバータに適用した結果、1~10Aの負荷電流で91~92%の主回路効率と1V・10A(10 W)出力で5.0W/ccの主回路体積電力密度を達成した。さらに、トロイダル鉄心トランスを48V入力-24V出力GaNパワーデバイスMHzスイッチングLLC共振DC-DCコンバータに適用した結果、1~5Aの負荷電流で91~93%の主回路効率と24V・5A(120 W)出力で5.3 W/ccの主回路体積電力密度を達成した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
鉄系メタルコンポジット鉄心材料において、鉄粉最密充填時の課題であった体積抵抗率の低下を抑制する鉄粉表面への高抵抗皮膜形成技術を確立し、MHz帯損失の劇的な低減に成功した。また、試作したギャップレスリアクトル/トランスをGaNパワーデバイスを用いたMHzスイッチングDC-DCコンバータに適用し、高抵抗皮膜処理による鉄心の体積抵抗率向上が電力変換効率の向上に結びつくという結果を得た。 250℃の高温耐熱性を有する樹脂材料の開発に目途をつけ、高温動作SiC/GaNパワーデバイスにリアクトル/トランスを接近して高密度実装することを想定した鉄心材料の耐熱性向上に目途をつけた。
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今後の研究の推進方策 |
2年目の平成28年度は、高温耐熱樹脂を用いて鉄系メタルコンポジット鉄心材料の200℃以上の耐熱性の達成に重点を置くとともに、粒径分布の異なる複数の金属磁性粉の採用によってコンポジット鉄心材料の磁性体充填率を現状の54vol.%から60vol.%以上にすることで鉄心比透磁率を従来の2倍以上の15以上に高め、リアクトルにおいては所望のインダクタンスを得るための巻線数の減少により銅損の低減を図り、トランスにおいてはPFC(力率補償回路)前段回路を具備する380V入力DC-DCコンバータに対応するための励磁インピーダンスの増大を図る。また、さらなるうず電流損の低減が期待されるサブミクロン鉄粉を導入し、10MHz以上の超高周波DC-DCコンバータ用リアクトル/トランスを試作開発する。これらの技術を導入した改良型鉄系メタルコンポジット鉄心ギャップレスリアクトル/トランスをSiC/GaNパワーデバイスDC-DCコンバータに適用し、最終年度の平成29年度までに高効率(95%以上の主回路効率)と小型軽量(10 W/cc以上の主回路体積電力密度)を両立するSiC/GaNパワーデバイスDC-DCコンバータの技術実証を行う。
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