研究課題/領域番号 |
15H02264
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
勝見 武 京都大学, 地球環境学堂, 教授 (60233764)
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研究分担者 |
肴倉 宏史 国立研究開発法人国立環境研究所, 資源循環・廃棄物研究センター, 研究員 (70331973)
遠藤 和人 国立研究開発法人国立環境研究所, 資源循環・廃棄物研究センター, 研究員 (10353533)
保高 徹生 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 地圏資源環境研究部門, 研究員 (60610417)
佐藤 研一 福岡大学, 工学部, 教授 (20235336)
乾 徹 京都大学, 地球環境学堂, 准教授 (90324706)
高井 敦史 京都大学, 地球環境学堂, 助教 (30598347)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 土壌地下水汚染 / 地盤環境 / 資源循環 / 溶出特性 / 建設発生土 / リサイクル |
研究実績の概要 |
本研究は、科学的根拠および社会受容性に基づき、新しい2つの“地盤環境基準”の構築と実装を目指す融合研究であり、(1)科学的根拠に基づく溶出特性評価スキームの構築、(2)管理/保管/有効利用のシナリオ構築と環境安全性の評価、(3)規制影響評価および社会受容性評価の3つのサブテーマで構成される。 平成27年度は、汚染土壌からの重金属類の溶出特性を評価するための溶出特性化試験方法であるpH依存性試験、カラム通水試験、シリアルバッチ試験のうち、カラム通水試験に焦点を当て複数機関で各種要因が溶出特性に及ぼす影響を評価した。具体的には、通水溶媒、試料飽和方法、試料の含水状態、充填密度、試料の粒度、カラム径等の各種要因を検討項目とし、個別影響を明らかにした。その結果、1) CO2置換を併用する飽和方法は、充填試料の飽和度を高める手法として有効であるが、測定対象とする土壌や重金属によっては炭酸化が生じ、溶出量に影響する可能性があること、2) 飽和に用いる溶媒や静置時間の違いは、フッ素やヒ素の分析結果にほとんど影響を及ぼさないこと、3) 充填密度が異なることで溶媒の接触時間や流速が変化するため、支配的な溶出メカニズムの違いによって密度と溶出濃度の関係は元素によって様々であること、4) カラム径が小さくなると充填試料の不均質性による影響が相対的に大きくなること、5) 最大粒径が4.75 mm以下の砂質土を対象とする場合には、カラム径の違いが溶出挙動に与える影響は小さいこと等を明らかにした。 さらに高さ30cmの10分割カラムを用いて不飽和土壌内での物質移行を評価したところ、土壌への吸着性が低いフッ素は、1mg/L程度の浸出液であれば不飽和層で土壌汚染が発生するリスクは低いものの、カラム通過後の浸出水中には通水したフッ素濃度の95%程度の濃度のフッ素が溶出することが確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、科学的根拠および社会受容性に基づき、“地盤環境基準”の構築と実装を目指す融合研究であり、平成27年度はカラム通水試験により評価を行う上で考慮すべき様々な要因に対して分担して検討を行った。既に溶出特性の体系化に資する多くの定量データを取得できており、申請時の当初計画どおりに順調に推移していると判断できる。さらに研究代表者と研究分担者が委員長、委員として参画し、「社会実装に向けた新しい地盤環境管理と基準に関する研究委員会」を(公社)地盤工学会に立ち上げた。この委員会は産官学の各分野から50余名が参加し、既に計4回の委員会を開催し議論を深めるなど、社会実装の実現に向けた体制も整いつつある。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き複数機関での実験実施と解釈の高度化を行い、pH依存性試験、カラム通水試験、シリアルバッチ試験等の各種溶出特性化試験方法の標準化を目指す。様々な物理化学特性を有する試料を対象に成果を蓄積し、対象土壌の性状と汚染物質種との組み合わせによる溶出パターンを類型化することにより、必要最小限の試験で長期影響評価を行えるスキームを構築する。汚染物質の溶出挙動と、対象汚染物質や試料土質の関係を明らかにし、汚染土壌の溶出特性を類型化することで、今後の循環資源管理における基礎的なデータベースを構築する。 得られた成果に基づき、汚染土壌が環境中に存在するときに、水質環境基準や地下水環境基準を遵守できるレベルであるか判定できる二段階評価スキームを提案する。さらに環境安全性を担保し、かつ土木構造物として信頼性の高い有効利用シナリオの構築と管理手法の提案を行う。
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