研究課題
本研究は,科学的根拠と社会受容性に基づき,新たな“地盤環境基準”の構築と実装を目指す融合研究であり,(1)科学的根拠に基づく溶出特性評価スキームの構築,(2)管理/保管/有効利用シナリオの構築と環境安全性の評価,(3)規制影響評価および社会受容性評価の3つのサブテーマで厚生される。平成28年度は,溶出特性評価に関しては,より実現象に近い条件での環境安全性を明らかにするため,降雨浸透を再現した散水型カラム通水試験を実施し,自然由来重金属等を含む異なる土砂材料を用いて中長期的な溶出挙動の評価を行った。その結果,(1)石英閃緑岩のヒ素溶出特性は浸透水と試料の接触時間と浸透路長の影響を受けること,(2)海成堆積物のヒ素の溶出濃度は浸透路長と明確な関係は見られないこと,(3)海水を通水させた場合には還元的な環境となりヒ素の溶出濃度が高くなること,等を明らかにした。また,孔径の異なるメンブレンフィルターを用いて複数種の土質材料に対しバッチ溶出試験を行い,コロイド態として存在する重金属等の影響を定量的に評価した。利用シナリオの評価に関しては,固化材と土材料を混合し構築する吸着層,原位置土とベントナイトを混合して築造するSB鉛直遮水壁,放射性物質の移動抑制を図ったゼオライト添加型粘土ライナーのそれぞれの利用性を室内試験により評価した。その結果,(1)吸着層によるヒ素の吸着メカニズムは,ヒドロヒ酸イオンとカルシウムの形成によると考えられること,(2)SB鉛直遮水壁における拡散輸送の影響は無視できないが,水位管理により濃度上昇を低減しうること,(3)粘土ライナーにゼオライトを添加する場合,ベントナイト層と混合せず複層構造とすることで高い遮水性と吸着性が期待できること,等を明らかにした。
2: おおむね順調に進展している
平成28年度は,より実現象に近い条件下で溶出特性を評価し,溶出源評価と環境影響評価に必要な多くの科学的知見を集約した。得られた成果は(公社)地盤工学会内の研究委員会と議論しつつ高度化を図っており,社会実装に向けて順調に進捗している。利用シナリオについても,環境安全性を担保しつつ現地利用可能な複数の技術の性能と有効性を科学的に明らかにしており,溶出特性と利用シナリオの両面で研究成果を着実に上げている。
これまでの検討を継続し,溶出特性と利用シナリオ,対策技術の性能について中長期的な変化を評価する。有害物質を地盤材料として利用する場合には,保護層,キャッピングの適正な設置も不可欠であり,水分移動特性や物質移動性を考慮した環境安全性を検討する。得られた成果を取りまとめ,科学的根拠に基づく“地盤環境基準”を提案するとともに,社会受容性を踏まえた社会実装を行う。
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