研究課題/領域番号 |
15H02270
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
大口 敬 東京大学, 生産技術研究所, 教授 (90281245)
|
研究分担者 |
小根山 裕之 首都大学東京, 都市環境科学研究科, 教授 (90313105)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 交通工学・国土計画 / 交通信号 / 最適化問題 |
研究実績の概要 |
理論検討として,まず,複数交差点の系統制御のための隣接交差点間の青表示開始の時間差(オフセット)設計のための基礎的知見として,隣接交差点間で青信号表示時間が等しい場合を対象として,オフセットと遅れ時間の関係の一般化,および系統効果の定量化手法を導出した。また,交通信号制御のサイクル長,青信号表示時間,オフセットの同時最適化問題を,交通需要の確率的変動に応じた期待総遅れ時間を目的関数として定式化し,これを効率的に解く方法を提案した。さらに単路部横断施設における信号制御の最適化問題の定式化と,無信号との比較,2段階横断施設導入の効果を理論解析により明らかにした。 実証的分析においては,まず,昨年度検討を開始した縦隊整列戦略(TSS: Tandem Sorting Algorithm)と,右折禁止・Uターン制御戦略との2つの新たな幾何構造および交通制御戦略の計画・設計を最適化問題として定式化し,これを解くことで既存の交通信号制御とこれら2つの新制御戦略との比較,選定基準を提示した.また,交差点の安全性の観点から重要な要素の一つである左折車の走行軌跡について,その実証モデルを加加速度最小化原理により平均的な走行軌跡を導出する手法を提案し,その妥当性を検証した。 実験的検討については,実在しない新たな交差点幾何構造・交通制御条件の有効性を検討するツールとして,ドライビングシミュレータ(DS: Driving Simulator)を用いた走行実験環境の構築を実施し,信号灯器を仮想的に停止線直近に設置(Near side)した場合と現在日本で一般的な交差道路を越えた先に信号灯器を設置(Far side)とを比較する実験環境の構築とシナリオの試設計を行い,実験的研究手法の確立へ向けた検討を行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交通信号制御の最適化問題に関する理論的・実証的検討については順調に進展し,系統信号制御におけるオフセットと遅れ時間の関係の一般化,および系統効果の定量化手法の提案などの基礎的知見の体系化,交通需要の確率的変動を考慮した期待総遅れ時間最小化にもとづくサイクル長,青信号表示間,オフセットの3変量同時最適化問題の定式化と効率的解法を用いた事例計算による妥当性検証,既存の交通信号制御と縦隊整列戦略(TSS)とUターン制御戦略という新たな2種類の制御戦略との比較,選定規準の提示,および単路部歩行者横断施設における信号制御最適問題の定式化と,無信号制御との比較,2段階横断施設導入の効果評価,さらに歩行者との交錯の危険の一つの要因となる交差点左折車の走行特性を把握するための左折軌跡の実証データを基準化する手法の確立を実現しており,多くの課題に対して成果を産むことができた。 また,ドライビングシミュレータ(DS)を用いた実験的検討に関しても,分担研究者が保有する現有のDSを活用して,交差点部における交通安全性評価に使えるような道路・交通環境の構築と,これを用いて室内実験にもとづいて,実際には実現できていない施策や対策の効果を評価するための実証実験手順,評価指標など,実験的に研究を推進する手法の確立へ向けて,十分な成果が得られた。
|
今後の研究の推進方策 |
平成29年度には,研究分担者保有のドライビング・シミュレータ(DS)を用いた実験をさらに本格的に進展させ,周辺車両などの交通環境と交通安全施設,とくに交通信号灯器の位置やその信号表示の切り替りタイミングなどを適切に制御して,交差点幾何構造と交通制御の条件を体系的に変化させ,最も最適な幾何構造・交通制御設計のあり方について実験的に明らかにする取組みを精力的に推進する。 また,系統信号制御における基礎的知見をさらに深化させるため,平成28年度までよりもさらに一般的な青信号表示時間条件について,オフセットと総遅れ時間と系統効果の定量化を行い,任意の隣接交差点間リンクの遅れ時間の実現下限値を定量化するとともに,これをベンチマークとして任意の隣接交通信号の制御ロジックを開発し,交通シミュレーションを用いた事例分析によりその妥当性を確認する。 また,より交通処理上効率的で,交通安全上の望ましい画期的な交差点交通処理計画を実現する交差点の幾何構造設計と信号制御設計の実現可能性,その効果の定量評価についても取組む予定である。
|