研究課題/領域番号 |
15H02279
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
山中 俊夫 大阪大学, 工学研究科, 教授 (80182575)
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研究分担者 |
小林 知広 大阪大学, 工学研究科, 准教授 (90580952)
袁 継輝 大阪大学, 工学研究科, 助教 (10781437)
崔 ナレ 大阪大学, 工学研究科, 特任助教(常勤) (10826481)
竹村 明久 摂南大学, 理工学部, 准教授 (70584689)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 次亜水 / 噴霧脱臭 / 置換換気 / メチルメルカプタン / 4床病室 |
研究実績の概要 |
・冷却及び加熱壁面存在時の置換換気室内温度分布・汚染物濃度分布の測定:置換換気方式では、外気及び非空調室に接している壁面に上昇または下降気流が発生する場合、境界面高さの変動や空気清浄性の低下が引き起こされる可能性がある。壁面上昇・下降気流の影響を調べるために、実大4床病室を模擬した人工気候室において、非断熱壁面を設置し、壁面により区切られた部分(仮想外気室)を循環型温度制御装置により温度制御を行うことで非断熱の壁面を冷却・加熱した。19条件において室内温度分布と汚染物濃度分布の測定を行い、壁面温度によって置換換気室内の鉛直温度分布及び人体発生汚染物の濃度分布が大きく影響を受けることを明らかにした。特に、冷却壁面が存在すると、室上部の滞留汚染物が下降することにより、室下部の居住域空気質が低下し、さらに温度が低くなると、置換換気が成立しなくなることがわかった。 ・置換換気室における汚染物濃度分布予測モデルの検証:既往研究の境界領域モデルにおいて、壁面気流の計算部分を、実現象を正しく反映したものに改良し、予測モデルの検証を行った。その結果、下降気流がある条件において、室下部濃度の計算結果が測定結果より少し高い傾向が見られたが、濃度分布の傾向は概ね一致しており、境界領域モデルにより十分濃度分布が予測可能であることが証明された。 ・次亜水噴霧による臭気強度低減効果の定量化:より微細なミスト噴霧器を用いて、次亜水によるメチルメルカプタンの臭気強度低減効果に関する実験研究を行った。またこれまでは、気中のメチルメルカプタンがミストに触れてミスト中に溶け込み、ミスト内で次亜水と反応して分解するという仮定の上で、モデル化して検討を行ってきたが、気中に気化したガス状の次亜塩素酸が、メチルメルカプタンと反応する気中での分解効果が確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初は予定していなかったが、壁面温度と室内空気温度の差により発生する上昇・下降気流が置換換気室内の空気性状に与える影響が大きいことが予想されたため、室内の壁面一面の表面温度を変化させ、室内温度・汚染物濃度分布を測定した。当初予定していたカーテンの有無・ドアの開閉などの外乱条件置換換気室内の汚染物濃度分布に及ぼす影響についても、現在実験を進めている。 一方、次亜水噴霧については、液中、気中ともに、臭気強度低減効果を単位噴霧流量当たりの相当換気量として定量化できた。ただし、この両者の組み合わせについては大きな減衰効果は得られなかったことから、様々な臭気物質と分解物質との組み合わせについて化学反応理論に基づいた検討を行うことが必要と考えられる。 以上のように、当初の研究計画とは若干異なるものの、研究全体としてはほぼ順調に進展していると言うことができる。
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今後の研究の推進方策 |
以下の小テーマを立て、大学院生2名、研究分担者4名、研究代表者1名の計7名で研究を推進する。 ・噴霧ミストによる脱臭効果の検証:実験は大阪大学に作成して従来より研究に使用している無臭室で行い、主観評価実験のための官能試験パネルは6名とし、官能試験については、嗅ぎ窓から顔を入れて検臭を行う嗅ぎ窓法を用いることとする。前年度実験対象としていた微粒化された次亜水ミストを用いて、気中反応でのメチルメルカプタンの臭気強度減衰効果に関して、官能試験による検証データを得る。 ・外乱条件が室内汚染物濃度の分布に及ぼす影響の解明:4床室を再現した実大の置換換気室において、カーテンの有無の影響の程度を実験的に明らかにするための実験を行う。汚染物としては、臭気を代表させたトレーサガス(CO2)の濃度の計測を行う。実験と同時に標準k-ε乱流モデルを用いたCFD解析行い、汎用ソフトを用いた移動境界解析についての技術的問題点を明らかにするとともに、カーテン内に十分な給気を行うための設計指針(カーテン上下の距離、高さ)の提案を行う。
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