研究実績の概要 |
均一系の研究では,k-Al2O3型酸化物およびYMnO3型酸化物を中心にして薄膜合成を行い強誘電性と磁性を評価した.k-Al2O3型酸化物ではAxFe2-xO3のうちA=Al, Ga, Fe, Rh, Sc, Inの薄膜合成を行った.A=Al系では0<x<1.75までの範囲で固溶体薄膜を得ることに成功した.組成変化に伴って,TNは連続的に減少するが,飽和磁化はx~1不均で極大を示す事が確認され,これが4つのカチオンサイトのうちAlが占有するサイトに依存することが判明した.A=Ga系ではリークが大きいものの,広い組成域で固溶体が形成し,TN付近での磁気抵抗の異常,基板の種類と方位を変化させることにより結晶の方位を変化させる事が可能なことを確認した.A=Fe系では室温で強誘電性を確認する事ができた.A=Rh系では抗磁界が一連の系では一番大きいことを確認した.A=Sc系ではk-Al2O3型のみならず,基板の種類を変化させることにより5つの構造が出現し,このうち,強誘電相はk-Al2O3型とYMnO3型であることが判明した.ScFeO3に関しては室温でリークが少なく強誘電性が測定しやすいことを確認した.A=In系ではSc系と同様に室温でリークが少なく強誘電性が測定しやすいことを確認した.また,AサイトにGaとScあるいはInを共置換することで,リークが少なく,磁化が大きい薄膜を得ることとができることを確認し,置換元素が選択的に特定のサイトを置換することが検証された.また,TEMによる組織観察も行っており,第1原理計算の結果と組み合わせて組織,電子構造,フォノン構造,磁気的相互作用の観点から物質設計をおこなうことで室温におけるマルチフェロイック特性を実現するための戦略を調えた.ヘテロ系で磁性体膜の分極反転を最大限大きくするためにBaTiO3薄膜を堆積し面内配向する膜の作製に成功した.
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