セルロースからなる赤血球状粒子 (RBC-MPs) をエレクトロスプレー法により作製した 。比較のために、同様の方法で、セルロースから成る球状粒子 (SPH-MPs) とシリカを含有する赤血球状粒子 (RBC-SiO2-MPs) を作製した。各粒子の形状、弾性、粒子内弾性分布を評価し、これらの因子が体内動態へ与える影響を調査した。さらに、肝硬変マウスに投与することで、RBC-MPsを用いた肝硬変の治療効果および肺への副作用を調査した。 RBC-MPsは、実物の赤血球と類似した形状を有していた。粒子内の弾性分布を評価したところ、RBC-MPsは中央の窪みのヤング率が縁のヤング率よりも低く、窪みを基点として変形できるような粒子内弾性分布を示した。一方、SPH-MPsおよびRBC-SiO2-MPsはこのような特異な弾性分布は示さなかった。また、RBC-SiO2-MPsはRBC-MPsおよびSPH-MPsに比べヤング率が2桁高かった。これらの微粒子を自径よりも細い細孔に流したところ、RBC-MPsは変形しながら細孔を通過したのに対し、SPH-MPsおよびRBC-SiO2-MPsは細孔を通過することができなかった。これらの微粒子をマウスに静脈内投与し、蛍光イメージングにより体内動態を評価したところ、RBC-MPsは肺および脾臓への蓄積を回避し、肝臓に特異的に集積した。一方、SPH-MPsおよびRBC-SiO2-MPsは肝臓だけでなく肺および脾臓に蓄積し、特定の臓器をターゲティングすることはできなかった。このようなRBC-MPsの体内動態を活かし、線維症の原因を阻害する物質を肝臓のみに運搬することで肝硬変の治療を試みたところ、肺への副作用なく、肝臓の線維化した組織を修復し、肝機能を回復させた。
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