研究課題/領域番号 |
15H02297
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
杉村 博之 京都大学, 工学研究科, 教授 (10293656)
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研究分担者 |
一井 崇 京都大学, 工学研究科, 准教授 (30447908)
宇都宮 徹 京都大学, 工学研究科, 助教 (70734979)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 異種接合 / 真空紫外光 / 表面処理 / 自己集積化単分子膜 / 光化学 |
研究実績の概要 |
真空紫外(Vacuum Ultra-Violet, VUV)励起反応によるポリマー表面の改質と接合反応活性化、バルクの性状を変えずに無機材料表面に接合反応活性を付与するための有機単分子膜被覆および単分子膜のVUV処理、この二つの技術要素を基盤とする接着剤フリーの無機材料-ポリマー接合技術の確立を目的とし、研究を実施した。プラスチックおよび単分子膜のVUV表面改質過程で、どのような表面化学官能基が系競れるか/あるいは除去されるかを詳細に検討した。その結果、表面状態と表面処理条件をデータベース化し、表面官能基状態を予測できるようになった。加えて、新規に導入した接合強度評価装置を用いて表面状態と接合強度の関係性を明らかにするための道筋をつけた。しかしながら、試料表面の凹凸をカバーするためにポリマー素材を凹凸形状に倣うように一定程度熱変形させる必要があり、100℃程度の加熱を必要とした。そのため、ポリマー/無機材料間に熱応力が発生とそれによる剥離のため、強度測定が可能な範囲が限定されてしまうという問題が、次年度の課題として残った。また、VUV励起反応に関する知見を補強し、改質-接合メカニズムを明らかにするため、波長160nm以下のVUV光源を導入し表面改質過程に関する波長効果を検討した。装置完成が遅れH28年度へ繰越となったが、波長効果データを得ることができた。例えば、炭化水素ポリマーであるシクロオレフィンポリマーの場合、172nmVUV光では酸素分子の存在が表面改質反応に必須であるが、160nmVUV光では炭化水素骨格を直接励起解離し、無酸素環境でも表面改質反応が進行することがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
引張剥離試験機を設備導入したことにより、接合強度を数値化できるようになった。表面/界面状態と接合強度の相関をより定量的に評価できるようになった。測定できる接合強度領域がまだ狭いが、おおむね順調に進行している。 160nmVUV照射実験装置の完成が遅れ、VUV励起反応の波長効果を検証する実験が年度繰り越しとなった点で、研究遂行に若干の遅れがあったが、装置を完成させ実験データの集積を始めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
無機材料表面に有機単分子膜を被覆しポリマーと同様にVUV処理することで、VUVポリマーの接着性と類似の接着性を無機材料表面に付与できることを実証した。しかし、無機材料表面に存在する少なくない凹凸のため、100℃前後まで加熱してVUVポリマーを一定程度熱変形させないと接合強度を確保できなかった。その結果、有機材料と無機材料の熱膨張係数の差に起因する熱応力に剥離が生じ、厚みが20~30μm程度の極薄ポリマーシートでなければ接合できないことが、克服すべき課題として残っている。極薄ポリマーシートは破断強度が低く、この破断強度以下の狭い測定領域でしか接合強度が定量評価できないばかりでなく、接合強度が凹凸の存在に強く支配されるため、真の界面接合メカニズムにたどり着くための障害となっている。そこで、表面凹凸を極小化(表面粗さ1nm以下)することで、接合温度の低下(室温化)。熱応力フリーの接合試料を作製する。具体的には、シリコン基板を化学エッチングして得られる原子レベルの平滑試料を用い、凹凸の影響を極力排除した試料での強度試験/界面分析を行う。
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