異種のポリマどうしを融合したポリマ-ポリマ複合材料を、ポリマ分散型複合材料で実現し、理論弾性率に迫る複合材料の作製をすることが本研究の目的である。本年度においては、ナノスケールのポリマ分散材の高強度化とポリマ-ポリマ複合材料における母材と強化材の親和性の向上を図り、さらにその弾性率を理論弾性率と比較した。その結果、i) 熱処理によるセルロースナノファイバ(C-NF)の高強度化、ii) 表面改質を施した高強度C-NFの複合化による母材の力学物性の向上、の2点において進捗した。 一般的に、ポリマの結晶化度が増加するとポリマの強度も増加する。そこでi)に関しては,熱処理をすることでセルロースアセテートナノファイバ(CA-NF)の結晶化度を増加させた。さらに、その高結晶化CA-NFを化学処理することで高強度のC-NFの作製を試みた。具体的には、CA-NFに対し50℃の熱処理を12時間施すことで、C-NFの結晶化度は熱処理前の37%と比較して41%まで向上し、その弾性率は熱処理前の9 GPaと比較して28 GPaまで増加した。ii)においては、母材として選んだポリカプロラクトン(PCL)に表面改質したC-NFを複合化し、母材とC-NF分散材の接着性を向上させて、力学物性の向上を目指した。具体的には、i)で高強度化したC-NFに、母材と同じPCLによる表面改質を施し、接着性の向上を図った。その結果、C-NFを15 wt%含有したPCL複合材料の引張強度は24.4 MPaであるのに対して、表面改質後の引張強度は28.1 MPaとなり約15%向上した。現在、研究分担者である茨城大学の前田知貴助教と協力し、分散材の修飾鎖の絡み合いをX線小角散乱法により定量している。以上より、本研究を通して複合材料の力学物性向上の手法として、ナノポリマ分散材の熱処理による高強度化と表面改質の有用性が示された。
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