研究課題/領域番号 |
15H02299
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
蔡 安邦 東北大学, 多元物質科学研究所, 教授 (90225681)
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研究分担者 |
野澤 和生 鹿児島大学, 理工学域理学系, 准教授 (00448763)
西本 一恵 東北大学, 多元物質科学研究所, 助教 (10586168)
寺内 正己 東北大学, 多元物質科学研究所, 教授 (30192652)
亀岡 聡 東北大学, 多元物質科学研究所, 准教授 (60312823)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | リーチング / 格子欠陥 / 触媒活性 / 双晶 |
研究実績の概要 |
平成28年度において、で最も触媒活性の高いAl2AuでリーチングしたポーラスAuにおけるナノ双晶の解析ならびに双晶による触媒活性の向上を配位数の観点から検討した。また、ポーラスCuおよびAgのナノ双晶の形成の可能性についても調べた。以下に平成28年度の研究実績をまとめる。 (1) Al2Auを前駆体として10%のNaOH水溶液でリーチングを施して、得られたポーラスAuについて、透過電顕では多数のナノ双晶が観測された。放射光X線回折測定では、ピーク幅を解析した結果、(200)および(400)ピークが極端にブロードになっていることが分かった。 (2)ポーラスAuのリガメントに双晶が形成される際、双晶が表面に突き出て、リガメントの表面に凹凸が現れる。表面に突き出る(凸)原子列の配位数は7となる。表面でV字溝(凹)の部分で構造緩和のために新たなAuの原子チェインが形成されることは、エネルギー計算で分かった。このチェインにあるAu原子の配位数は6となり、このチェインをW-Chainと呼ぶ。 (3)汎関数密度法の計算により、W-Chain ブリージサイトだけにO2が吸着することが分かった。これらの分子の吸着エネルギーの計算に基づき、ポーラスAuにおけるCO酸化反応が以下の二つのシナリオを提案した。[1]まず、O2 がW-Chainに吸着し、COがその他の表面に吸着する。Au表面上におけるCOの拡散エネルギーが低いので、COがW-Chainに移動し吸着酸素とCO2およびOを形成する。[2]COおよびO2ともにW-Chainに吸着し、W-Chainに沿って一旦CO-OO中間帯を形成してからCO2へ変わっていく。 (4)Al2Cu正方晶を前駆体として用いて、HClおよびNaOH水溶液でリーチングすることで、いずれもポーラスCuが形成されることが分かった。ポーラスAuよりも高密度のナノ双晶が形成されることも透過電顕観察で確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
現時点の進捗は計画通りに進んでいる。本研究で見出されたW-Chainの存在が触媒活性を担うことは極めて斬新な概念であり、3月下旬に触媒討論会で発表した際、大きな反響を得た。今後、触媒作用の起源として発展されると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は当初の予定通りに研究を進めるが、触媒の評価について、CO 酸化反応だけでなく、アセチレンやプロピンの水素還元を併用することより、W-Chainの可能性を拡張していく予定である。
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