研究課題/領域番号 |
15H02304
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研究機関 | 国立研究開発法人物質・材料研究機構 |
研究代表者 |
平 徳海 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 構造材料研究拠点, 主幹研究員 (80354207)
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研究分担者 |
阿部 太一 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 構造材料研究拠点, 主幹研究員 (50354155)
大沼 正人 北海道大学, 工学研究院, 教授 (90354208)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 炭素鋼 / オメガ相 / 相変態 / 双晶境界 / 電子線回折 / TEM / 炭化物 / マルテンサイト構造 |
研究実績の概要 |
平成30年度は急冷したFe-NマルテンサイトのBCC双晶境界領域に粒径1-2 nmで均一分散しているω-Fe相をTEM観察および電子回折により確認した。また、超低炭素Fe-C合金中のラスマルテンサイト構造が急冷試料の双晶マルテンサイトと明確な相関を持っていることを明らかにした。さらに、Fe-C鋼においてはマルテンサイトのBCC双晶領域にナノω相が、また、双晶領域内にα-Fe 相が粒径1-2 nmで均一分散している状態のTEM暗視野観察に初めて成功した。またTEM内で、Fe-C双晶マルテンサイトを加熱し、その場観察を行った。その結果、温度上昇に伴い(200C)、双晶境界領域においてω相からθセメンタイトが生成することを発見した。一方、理論解析の結果は、多くの晶帯軸方向で、α-Fe双晶の電子線回折がω相の電子線回折を重なることを示した。したがって、一般的電子線回折には、ω相の同定は困難であるが、特定晶帯軸方向で、分離したα-Fe双晶の電子線回折とω相の電子線回折を発見し、ω相の同定に成功した。以上の通り、30年度に計画した炭素鋼中のω相の形成メカニズムに関する研究は、当初計画通り順調に進行した。得られた成果は、国際学術論文誌(5篇)、国際および国内学会で(IIW6 2018、日本鉄鋼協会)発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
TEM中でFe-CとFe-Nの双晶マルテンサイトのBCC双晶粒界において、粒径1-2 nmのω-Fe相の観察に成功した。また、Fe-C合金におけるTEM中その場加熱実験では、温度上昇に伴い、ω-Fe3C相からθ-Fe3C(セメンタイト)への相変態が観測された。この結果はオメガ相がセメンタイトの前駆体であることを示している。以上の結果より、当初計画どおり、炭素鋼中のオメガ相の形成メカニズムを実験的に証明できた。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度で得られた急冷Fe-Cモデル合金中のオメガ(ω-Fe)相のTEM観察の結果に基づいて、平成31年には、以下の2項目を実施する。 1)Fe-C合金中においては、オメガ粒子がシングルナノメーターのサイズ領域でのみ安定であり、そのサイズ領域を越えると炭化物に変態する原因を究明するために、オメガ(ω-Fe)相と相関する新型炭化物の結晶構造を解明する。また、オメガ(ω-Fe)相からできた炭化物の結晶構造を解析し、炭化物の形成過程におけるオメガ(ω-Fe)相の役割を明らかにする。 2)オメガ(ω-Fe)相の形成過程における磁性の役割について、第一原理計算で理論的に解析し、オメガ(ω-Fe) 相の安定性に及ぼすCとN原子、並びに磁性との関係を検討する。
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