セメンタイトは、結晶構造上においてω相から容易に生じることがわかった。焼き入れマルテンサイト鋼における炭素原子は、ω相の中にしか存在しないため、炭化物はω相のみから由来できる。炭素鋼の強度は、炭化物に依存し、特に炭素鋼に存在するセメンタイトは、一般的に炭素鋼の強度に大きな影響を与える。しかし、変態後、セメンタイトの核がどう生成されたのかについては解明されていない現状である。幾つかの報告があったが、今日に至っても疑問点や不明点などが残されたままである。理論上、低温状態で炭素原子がBBC結晶に侵入して固溶体の生成はできない。すなわち、炭素原子はBCC結晶を通じて拡散することができない。したがって、低い温度での焼きなまし時、炭化物がどのように生成されるのかは難解問題である。特に、数十ナノオーターサイズのセメンタイトの生成に関するメカニズムは、解明されなかった。ω-Fe3C → ω′-Fe3C → θ′-Fe3Cのtransition pathwayを解明した。
|