初年度は、幅が15nmの配線溝およびビアにおいて、スパッタ法で銅のダイナミックリフロー試験を試みた。ダイナミックリフローは250~350℃で完全な埋め込みが見られた。時間依存性はリフロー時間の1/2乗に比例し、スパッタパワーの依存性はなかった。また、追加熱処理による埋め込みの進行は見られなかった。これらの結果より、ダイナミックリフローの機構としてスパッタ蒸着時の運動エネルギーによるとするモデル、および配線内部の表面・界面エネルギー平衡によるとするモデルだけでは、全ての結果を矛盾なく説明することができないことが判明した。一方で、熱応力を考慮することで定性的な説明が可能であることが明らかになった。 次年度は、種々の初期組織を有する15nm 幅の微細配線を作製し、成膜後にリフロー熱処理を実施することによる埋め込み組織形態を観察した。配線表面の曲率勾配は、初期組織のみに依存し、リフロー埋め込みを促す初期組織を特定することができた。すなわち、オーバーバードンが無い場合が好ましいことを示した。一方で、熱応力勾配は初期組織だけでなく加熱・冷却過程にも依存し、高温への加熱時とそれに続く冷却時において埋め込みが促されることが明らかになった。得られた結果から、経験的に知られていた実験事実に対する明確な説明を与えることができた。 最終年度は、任意の初期形状を与えたときに、表面曲率勾配と熱応力勾配によって、銅配線の形状がどのように変化するかを予測することを試みた。Level Set Methodという方法を用いて、2種類の異なる駆動力を同時に考慮してリフロー挙動の経時変化のシミュレーションを行った。シミュレーションの結果は、実験で得られたリフロー挙動と定性的に一致することが明らかになり、2種類の駆動力を用いたモデルが妥当であることを示した。
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