研究課題/領域番号 |
15H02321
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
佐宗 章弘 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (40215752)
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研究分担者 |
岩川 輝 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (70733236)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 超音速流れ / 衝撃波 / 乱流 / 境界層 |
研究実績の概要 |
本研究では、超音速流れが「乱れ」によって変調されるメカニズムを解明し、それを積極的に利用した新しい超音速飛行技術を開発することを目的として、①衝撃波圧力の緩和と②流れの損失低下に焦点を絞って実施した。①では、120mm×120mmの矩形断面を持つ対向衝撃波管システムを完成させ、作動実験および熱線風速計を用いた速度履歴の空間分布データを取得した。衝撃波管実験では、衝撃波背後で圧力、温度がともに上昇するため、熱線風測定の較正に対してもこの2変数による補正を定式化した。矩形断面バリスティックレンジにおいて、落下格子を用いて超音速自由飛行領域に人為的に乱流を発生させるシステムを完成させ、作動実験を行った。これによって、衝撃波面が乱流によってトポロジー変化し、背後圧力が変調することによって、人為的に機体近傍場に速度乱れ場を作りソニックブームを軽減できることを実証する準備が整った。また、単一のレーザーパルスを単一箇所に集光し、絶縁破壊によって高温低密度領域を発生させることによって、超音速自由飛行体が誘起する衝撃波背後で圧力変調が起こり、ピーク過剰圧および最大圧力勾配が低くなることを実証した。②では、衝撃波-境界層干渉領域の非定常特性を調べるため、人為的な非定常擾乱を広範な繰返し周波数で付加して挙動を調べ、いわゆる低周波数振動が上流の乱れを導入することで制御できることを実証した。これは、繰返しレーザーパルスによって、境界層剥離の能動制御が可能であることを示唆する重要な結果であり、来年度以降の研究成果の発展に明るい見通しが得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
(1)衝撃波圧力の緩和では、大型対向衝撃波管システムが本格的に稼働可能となり、試験気流の検定として、温度、密度変化を考慮した熱線風速計の較正方法を確立して、境界層厚さを精密に評価することが可能となった。今後、格子乱流と垂直衝撃波との干渉の実験を本格的に実施できる見通しが立った。レーザーパルスによって人為的に衝撃波圧力変調場を発生させる実験については、一箇所にレーザーパルスを集光させて高温・低密度場を作り、超音速自由飛行物体から発生する衝撃波背後の圧力を変させることができることを実証できた。多点ではないが、これは当初予想した以上の成果が挙がったと考えている。(2)流れの損失低下について、超音速流れの中におかれた半球―円柱―フレアーモデル周りの衝撃波―境界層干渉において、エネルギー付加による乱れの導入によって、現在最大の課題となっている「低周波振動」が抑制できることが実証できた。また、これまで、離脱衝撃波および淀み点を含む流れでのみ効果が得られていたのに対して、これらを伴わわない二重円錐モデルでも効果があることが実証できた。
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今後の研究の推進方策 |
(1)対向衝撃波管での実験を進め、垂直衝撃波と乱流の干渉に関する実験データを提示し、各所で行われている数値研究に実験データを提供する。エネルギー付加による積極的な衝撃波背後の圧力場緩和についても、その作用タイミングの効果などさらに深く探究する。(2)流れの損失低下については、二重円錐とカウルを用いた超音速ディフューザーモデルを製作し、乱れの導入によって不始動が回避できること実証したい。
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