本研究では、超音速流れが「乱れ」によって変調されるメカニズムを解明し、それを積極的に利用した新しい超音速飛行技術を開発することを目的として、①衝撃波圧力の緩和と②流れの損失低下に焦点を絞って実施した。大型正方形断面対向衝撃波管、矩形断面in-tube catapult launchバリスティックレンジ、100kHzまでの高繰返しパルスレーザーによりエネルギー付加した超音速風洞など、独自に開発した装置を活用した実験を中心に行った.①では、120mm×120mmの矩形断面を持つ対向衝撃波管システムを完成させ、衝撃波-格子乱流対向干渉実験を行うことが可能になり、乱流中を伝播する距離が長くなるにつれて衝撃波面の乱れが大きくなり、波面トポロジーが変化することを実証した。また、単一のレーザーパルスを単一箇所に集光し、絶縁破壊によって高温低密度領域を発生させることによって、バリスティックレンジによって射出された超音速自由飛行体が誘起する圧力場全域において変調が起こり、後端ブームを含めて遠方場ブームを低くできることを実証した。②では、マッハ1.9ならびにマッハ3.2の超音速風洞内の流れに対して,繰返しレーザーパルスによって乱れを導入し、超音速ダクト内の衝撃波振動、全圧損失が低減できることを実証した。特に、超音速流中におかれた二段円錐モデル周りの流れに対する乱れ導入の影響を詳しく調べ、損失が低減されるメカニズムとして、対象とする衝撃波振動が、導入する擾乱の周波数よりも低い帯域に変調するためであることを実証した。
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