研究課題/領域番号 |
15H02323
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
佐藤 哲也 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (80249937)
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研究分担者 |
津江 光洋 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 教授 (50227360)
土屋 武司 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 教授 (50358462)
富岡 定毅 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, その他部局等, 研究開発員 (50358553)
田口 秀之 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 航空技術部門, 研究領域リーダ (90358515)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 極超音速機 / 極超音速エンジン / 機体推進統合制御 |
研究実績の概要 |
本研究では、空気吸込式エンジンを用いたスペースプレーン/極超音速航空機の実現に向けて、極超音速機の機体系と推進系の相互干渉効果を解明し、サブスケール実証機(HIMICO: High Mach Integrated Control Experimental Vehicle)による統合制御実証をMach 4超音速燃焼風洞設備(RJTF)を用いて行うことを目標としている。2015年度は、以下の通り、相互干渉を考慮したシステム概念設計、機体空力設計、飛行軌道解析、エンジン試作、試験を実施した。 機体システムは、空力性能と飛行制御則を統合した飛行シミュレーションを繰り返すことで、将来の飛行実証ミッションの条件を満たすロバストで最適な飛行軌道を策定した。機体の空力性能は、極超音速風洞実験(Mach 5)、CFD解析、LSI法により推定し、実験とCFDの良い一致を得た。また、機体方向安定性の改善に向けた設計を見直し、操舵に必要なエレボン、アクチュエータ、フライトコンピュータ等の選定、製作を実施した。 エンジンに関しては、RJTF試験用模型を設計、製作し、超音速風洞実験と燃焼実験を行った。超音速風洞実験では、主としてエアインテークとノズルの性能マップを取得し、設計値をほぼ満足することを確認した。CFD解析との比較の結果、定性的な傾向は一致したが、定量的な不一致(流量捕獲率で10%以上)が見られたため現在原因を調査中である。ラム燃焼器の噴射器に関しては小型風洞を用いた風洞実験により形状の最適化を行い、これをエンジンに組み込んだ燃焼実験によって、着火燃焼特性を取得し、耐熱性等の問題点を抽出した。 その他、機体構造の概念検討、空力加熱やエンジン排気流の熱流束評価と断熱手法の検討、艤装検討、超音速燃焼風洞実験および飛行実証試験に向けた検討を実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
全体的にはそれ程大きな問題はなく進んでいるが、もともとタイトなスケジュールを組んでいたため、設計の見直しにより一部予算の繰越が発生してしまった。具体的には、当初予定していた機体形状はHYTEX形状と呼ばれる扁平型のものであったが、搭載品の詳細検討を行った結果、エンジンを2基から1基に減らし、かつ胴体の体積を増加する必要性が発生した。その結果、空力検討およびそれに伴う大幅な飛行制御則の見直しが迫られたため、飛行制御装置の開発が半年程度遅れてしまった(2016年度に完成)。 各要素研究の進捗に関して以下に示す。機体に関しては、形状の大幅な見直しが行われたが、予定通りミッションを満たす形状を設計し、実験、解析により確認が完了した。飛行軌道と機体形状を統合した飛行シミュレーションによって、飛行実験条件を満たす軌道、制御則を策定することができた。機体構造系に関しては、艤装検討、構造強度設計、耐熱性の検討を実施し、ほぼ予定通りに進んでいる。エンジンに関しては、予定通りRJTF試験用モデルが完成し、風洞試験、燃焼試験によって、基本性能を把握することができた。機体との干渉効果については、数値解析コードを構築し、今後考察を深めていく予定である。 研究の調整については、各試験や解析ごとに担当者の調整会議を随時開催するとともに、年に4回、本研究に関連するメンバーを集めてHIMICO研究会を開催し、成果の進捗やインターフェイスの調整を実施した。また、宇宙輸送シンポジウムの特別セッションを開催し、外部に成果を報告した。
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今後の研究の推進方策 |
2016年度以降は、今年度実施した概念設計、基盤研究の結果を受け、以下の通りRJTF試験の実施に向けた詳細設計および機器類の開発を行うことで研究を加速させる。 (1) 機体システム系:RJTF試験供試体を設備に入れた際に風洞が始動するかどうかを確認するため、1/5サブスケールの模型を製作し、Mach 4パイロット風洞試験によって確認する。機体主構造および耐熱系の詳細設計を実施し、部分的に試作する。 (2) 軌道制御系:最適化軌道設計に基づき、制御装置の開発、製作、試験を実施する。RJTF試験用制御シーケンスを策定する。また、フライトコンピュータ、電装系について、詳細に検討し、試作、試験を実施する。 (3) 推進系:エアインテークに関しては、前年度同様、超音速風洞実験とCFD解析により空力性能データを積み重ねる。特に、今後、重点的に評価する迎角、横滑り角、機体との干渉効果は、CFD解析による評価が重要となるため、実験とCFDの定量的誤差に関して調査をすすめる。また、燃焼試験時に発生した構造上の不具合を修正すべく、設計の見直しと再実験を実施する。ラム燃焼器に関しては、自発着火および安定燃焼するための条件について調査する。また、燃焼器内外の非接触温度計測手法の検討をおよび実証試験を進める。 その他、将来の観測ロケットを用いた飛行試験の実現に向け、研究成果を提案書に盛り込むことでクオリティを上げるとともに、学会発表等による本計画の認知度向上を図る。
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