研究課題/領域番号 |
15H02326
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
高木 健 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 教授 (90183433)
|
研究分担者 |
鈴木 英之 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 教授 (00196859)
尾崎 雅彦 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 特任教授 (30529706)
多部田 茂 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 教授 (40262406)
飯島 一博 大阪大学, 工学研究科, 准教授 (50302758)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 浮体構造物 / 動揺低減 |
研究実績の概要 |
本年度は27年度に検討した多数浮体アレンジによる流体力学的相互干渉を利用した動揺低減法の代表的配置に関して数値計算を実施し、昨年度に実施した実験結果と比較した。その結果、数値計算に使用しているANSYS AQWAの精度が把握できた。その成果を利用し、浮体のアレンジ等を変える計算を行った。その結果、メイン浮体に表れるサブ浮体配置の影響は小さいこと、メイン浮体のロール拘束によってサブ浮体の運動は余り変化しないこと、サブ浮体の運動振幅はメイン浮体との間隔によって大きく変わること、サブ浮体の運動振幅に表れるピークはサブ浮体間の干渉影響によることなど、流体力学的相互干渉の性質を整理することができた。係留に関しては、サクションケーソンを基礎として利用したフェンダー係留方式の検討を行った。この検討により、設置のターゲットとしているブラジルの熱帯海域では、もっとも係留力が大きくなるメイン浮体の係留に関して、現存するサクションケーソン(洋上風車等で使用)と同等のものを利用することで係留が可能なことが分かった。 上記の検討とは別に浮体間にできる内水面の同調現象について、固有関数展開法を応用して検討した。その結果、サブ浮体配置とメイン浮体配置について内水面に同調現象が発生する危険な浮体アレンジを把握することができた。今後の研究ではこの危険な配置を避けることになる。さらに、係留系模型を使用した模型試験と、船体係留時の実験及び減揺フィンの効果を計測し、これらの影響を検討した。また、熱帯域における海洋生態系モデルについては、シンガポール沖での実際の海底地形データを用いて小型浮体を係留した場合について生物影響評価シミュレーションを実施し、浮体構造物周り・下部の環境影響評価を実施した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度までで多数浮体アレンジによる流体力学的相互干渉を利用した動揺低減法の代表的配置に関して数値計算を実施し、昨年度に実施した実験結果と比較した。その結果、数値計算に使用しているANSYS AQWAの精度が把握できた。これらは実験が困難であったため、当初予定していたより数値計算ソフトの精度確認が遅れたが、28年度内には終了することができた。また、多数浮体の場合の精度に関しては内水面への人工粘性付加などの数値計算上の工夫を今後検討する必要があるが、これらは精度向上には有効かもしれないが、研究遂行上大きな問題ではない。また、浮体アレンジの影響についても検討を行い、浮体配置の設計方針については大凡把握することができた。しかし、最適配置については使用時の仕様により最適条件が変わるため、当初目標の最適配置については本研究期間内で求めることは断念した。係留に関しては、サクションケーソンを基礎として利用したフェンダー係留方式で、もっとも係留力が大きくなるメイン浮体の係留に関して、現存するサクションケーソンと同等のもので可能なことが分かり、最低限の目標は達成した。今後はコスト等、現実的なものの設計に移る。また、熱帯域における海洋生態系モデルについては、シンガポール沖での実際の海底地形データを用いて小型浮体を係留した場合について生物影響評価シミュレーションを実施し、浮体構造物周り・下部の環境影響評価を実施した。この結果からは画期的な成果はまだ得られていないが、最終年度にさらに調査を進めることで、一定の成果が得られると予想している。 以上のことより、おおむね順調に進展していると評価した。
|
今後の研究の推進方策 |
28年度までに実施した、多数浮体アレンジによる流体力学的相互干渉を利用した動揺軽減法に関する検討結果により、浮体配置の大まかな指針を得た。しかし、物流量の把握が正確に行われていなかったので、今後は、ロジスティクスの検討を通じて例題としてブラジル北東部の熱帯海域の用途に応じたTerminal全体の物流量を把握し、それを基にした浮体のサイズを検討する。また、物流の内容や係留船舶の種類に応じた動揺限界等の検討を行い、使用期間中における稼働率などの検討も行う。これらの検討の他にサイズや浮体の個数に応じた建造法の検討も行い、コストの低減を追求する。また、コンパクト係留法に関してはサクションケーソンを利用したメイン浮体のドルフィン係留についてさらに検討を深めて設置が容易なものを追求するとともに、サブ浮体についても検討を実施する。一方、浮体性能の向上策として、ムーンプールを利用した更なる浮体動揺低減法や、LNG輸送に特化した係留・浮体配置などについても検討を行う。これらは、本研究計画当初には考えていなかったことであるが、本研究成果に対して海外の提供者から得たアドバイスの活用を図るものである。 熱帯域における海洋生態系モデルについては、浮体構造物周り・下部の環境影響評価を継続するとともに、構造物や係留索への生物付着の程度を調査する。この手法の精度については引き続き文献調査の実施し、関連データとの比較により、問題点や精度の確認を行い、必要に応じて精度の向上を図る。
|