研究課題/領域番号 |
15H02332
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研究機関 | 室蘭工業大学 |
研究代表者 |
板倉 賢一 室蘭工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (20168298)
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研究分担者 |
佐藤 孝紀 室蘭工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (50235339)
蘇 発強 室蘭工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 研究員 (50751137)
高橋 一弘 室蘭工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (60746973)
濱 幸雄 室蘭工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (70238054)
児玉 淳一 北海道大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (70241411)
張 文艶 室蘭工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 研究員 (90750802)
濱中 晃弘 室蘭工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (20758601)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 資源開発工学 / 石炭地下ガス化 / UCG / 破壊制御 / AE計測 / 発熱量 / プラズマ放電 / 環境計測 |
研究実績の概要 |
本年度の研究計画通り,北海道三笠市幾春別(室蘭工業大学三笠未利用石炭エネルギー研究施設)において屋外UCG(石炭地下ガス化)模型実験を実施した。屋外UCG模型実験では,計画通りに人工炭層を作製し,2種類の同軸型UCG実験と,3つのボーリング孔を連結させたリンキング方式の実験を実施した。2種類の同軸型UCG実験の違いは孔底の形状で,一方の表面積が広い。いずれの実験でも,石炭への着火にはブタンガスを用いた。 一連の実験から,次の事が明らかになった。同軸型では孔底の表面積が石炭のガス化効率に影響を及ぼす。すなわち,表面積が大きいほど,ガス化燃焼領域が拡大することが,温度分布の変化やAE(破壊音)計測から明らかになった。リンキング方式においてガス化効率が高いのも,同じ効果による。従って,ガス化効率を高めるための燃焼領域撹拌・粉砕装置の開発は重要と考えられる。また,注入ガスの流量や酸素濃度はガス化効率に影響し,注入ガスによるガス化制御が可能であることがわかった。これらの関係を用いて,UCGシミュレータの開発に着手した。更に,石炭のガス化反応に化学量論を適用することで,地下の燃焼ガスの流量やガス化石炭量を推定できることがわかった。 UCGの模擬生産ガスを用いて,プラズマ放電による生産ガスの無害化実験を実施した。特に,硫化水素の脱硫特性およびメタン,炭化水素からの水素生成特性を把握した。その結果,平均脱硫率は70%を超え,UCGガス中の水素生成量が 30 % 増加することがわかった。 UCGによる環境負荷を監視するために,既存の無線計測システムを拡張した,環境計測システムを設計,構築し,動作を確認した。このシステムでは,UCG現場の大気,地表,地下および地下水の常時監視が可能で,それらの経時変化をインターネット経由で閲覧できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では,コンパクトで安全かつよりガス化効率の高い同軸型UCGシステムを提案し,その有効性を検証するのが目的である。このシステムの要は,1)同軸型UCGのガス化効率の向上,2)放電プラズマによる生産ガスの連続分離,無害化,3)周辺環境の監視・評価手法の確立,である。 初年度である本年度には,ほぼ当初の計画通り実験を実施し,種々の成果を得ることができた。1)に関しては,同軸孔底の表面積ならびに炭層の成層面方向がガス化効率に影響を与えることを確認し,予定通りの成果が得られた。また,石炭内の熱分布計測やAE(破壊音)計測により,燃焼ガス化領域の推定,可視化ができる見通しを得た。しかし,注入ガスの混合割合や流量を変えることでガス化効率を制御できることは確認したが,それらの定量的な関係が未だ明らかになっていない。更に,注入ガスに加えて,炭層内部の温度変化とAEの関係についても定量的な評価ができていない。これらの点は,当初の想定からは,やや遅れており,今後のデータの蓄積と分析が必要と考えられる。2)に関しては,UCGの模擬生産ガスを用いて,プラズマ放電によりガスの無害化や分離を連続的に行えることを確認した。しかも,省電力で実現できることがわかった。しかし現状では,実際のUCG生産ガスによる脱硫性能,ガスの分離性能を確認できていない。この点は,次年度に持ち越す結果になった。3)に関しては,既存の無線計測システムを拡張した,環境監視・計測システムを設計,構築,動作確認を行うことができた。予定通りの成果が得られたと考える。 更に,炭層破壊のメカニズムを取り入れた3次元UCGシミュレータを開発では,石炭の熱化学反応と化学量論に基づく生産ガスのシミュレーションが可能になり,ほぼ予定通りに開発が進んでいる。 以上を総合すると,概ね順調に研究が進んでいると判断される。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の目的である,コンパクトで安全かつよりガス化効率の高い同軸型UCGシステムを開発するために,1)同軸型UCGのガス化効率の向上,2)放電プラズマによる生産ガスの連続分離,無害化,3)周辺環境の監視・評価手法の確立,ならびに炭層破壊のメカニズムを取り入れた3次元UCGシミュレータの開発を,当初の計画通り目指してゆく予定である。 このために,平成28年度は北海道三笠市幾春別(室蘭工業大学三笠未利用石炭エネルギー研究施設)において,屋外UCG模型実験を継続する。この実験を通してデータを蓄積し,本年度明らかにできなかった,注入ガスの混合割合や流量とガス化効率の定量的な関係や,炭層内部の温度変化とAEの定量的な関係について明らかにしたいと考える。また,実験中のUCG生産ガスを用いたプラズマ放電によるガスの無害化,分離と,その効果も見極める予定である。 平成28年度の新たな取り組みとしては,レーザとファイバーケーブルを用いた,石炭への着火システムを構築する。また,同軸型UCGのガス化効率を高めるために,機械的内部攪拌法や急速温度変化法,酸化剤パルス注入法等を試し,石炭破壊領域と発熱量の関係等から,それぞれの手法のガス化効率を明らかにする。更に,消火の段階では,注入消化ガスとして炭酸ガスと窒素ガスを用い,消火効率の違いを検討する。 3次元UCGシミュレータの開発では,AE(破壊音)から推定される炭層内のき裂分布を取り入れる予定である。 更に,最終年度に予定している小規模現場実験のために,既に選定した露頭炭層の現場で,大気,地表,地下の環境監視システムを構築してベース・データを取得すると共に,現場の植生調査等を行う。環境監視データは,現場の計測車を通して大学の専用サーバに伝送し,関係者はインターネットを介して閲覧できるよう設計,構築する。
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