研究課題/領域番号 |
15H02335
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
稲垣 滋 九州大学, 応用力学研究所, 教授 (60300729)
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研究分担者 |
荒川 弘之 帝京大学, 福岡医療技術学部, 助教 (00615106)
徳沢 季彦 核融合科学研究所, ヘリカル研究部, 准教授 (90311208)
山田 琢磨 九州大学, 基幹教育院, 准教授 (90437773)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | プラズマ乱流 / 自己組織化 / リモートセンシング / イメージング |
研究実績の概要 |
本研究の重要な要素は、1) マイクロ波周波数コム反射計による微細空間構造の観測法の開発、2) 微細空間構造とプラズマの巨視的空間長とのスケール分離、3) 微細空間凸凹構造と乱流の時間的振る舞いの同時計測、である。1)に関しては昨年度に引き続き周波数掃引型マイクロ波周波数コム反射計の開発を行った。昨年度問題であった反射信号の信号雑音比の改善と周波数成分間での出力のばらつきを抑えるためエコライザーとアンプを導入し、入射マイクロ波の特性を改善した。初期的な結果を得たがミキサー内で局所信号の倍波によって不要成分が生じていることが明らかとなった。フィルター等の導入による更なる改善の方針を策定した。2) に関してはPANTAの運転磁場を増加させる事でイオンラーマ半径とプラズマ半径との比を減少させた。並せて、乱流の周方向と径方向の相関長を計測し、イオンラーマ半径の減少と共に相関長も短くなる傾向にある事を明らかにした。またレーザーを用いた平衡分布計測が進展し、イオンラーマ半径や勾配長がより高精度に評価可能となった。実際の実験に近い条件での乱流シミュレーションによるドリフト波乱流特性の定量的比較が可能となった。3) に関しては固定周波数型のマイクロ波周波数コム反射計による乱流時空間構造の同時計測を乱流の雪崩的伝搬の検出を試みている。高周波揺動のenvelopeに関する2時刻2点相関、離れた2点における非局所バイコヒーレンス解析を行い径方向にイオンラーマ半径の数倍引き伸ばされた構造が観測された。雪崩的伝搬かどうか今後の検証が期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の開発要素には1) 平衡分布の微細構造観測法の開発、2) 乱流の動的構造の検出法の開発、があり、それぞれ具体的には周波数掃引型周波数コム反射計の開発、乱流時系列データ解析法の開発、を行っている。周波数掃引型周波数コム反射計の開発では不要周波数成分の混入等に悩まされているが、計測機器開発の常として計画としては織り込み済みであり、今年度中に具体的な解決策も得られているので研究の進捗に大きな遅れとなる事は無いと考えている。乱流時系列データ解析法に関しては幾つかの手法がテストされ乱流の雪崩的伝搬の同定が進展中である。このため研究は順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の重要な要素は、1) マイクロ波周波数コム反射計による微細空間構造の観測法の開発、2) 微細空間構造とプラズマの巨視的空間長とのスケール分離、3) 微細空間凸凹構造と乱流の時間的振る舞いの同時計測、であり、上記に示したような成果が得られている。これらの成果を踏まえ、今後に以下のような実験研究をPANTAを用いて遂行する。 I. 開発した周波数掃引型のコム反射計を本格稼働し密度の微細空間構造を探査する。この際、微細構造を密度分布の曲率(分布の空間二回微分)の変動として検出する。曲率は周波数掃引時の信号変動に対しフーリエ解析を行い、掃引周波数の高調波の振る舞いを抜き出すことで評価できる。 II. 微細空間構造とプラズマの巨視的空間長とのスケール分離としては、磁場の増加とともにプラズマの径を大きくする。可変リミターを設置する事でPANTAプラズマの径を既存の 5cmから2-9 cm可変とする。これによりイオンラーマ半径とプラズマ半径との比を1/2する事ができる。更に動作ガスをアルゴンからヘリウムに変え、最終的に半径比を1/10以下にする。 III. 既存の固定周波数型コム反射計あるいはドップラー散乱計モードで密度揺動や周方向流速揺動の空間同時多点計測を行い、envelope解析やハースト数の評価、自己相関関数のテイル等を観測し、乱流の雪崩的伝搬を同定する。更に周波数掃引型のコム反射計により観測される微細構造と雪崩的乱流伝搬との時空間相関を評価する。
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