研究課題
本研究では、磁化プラズマ中に細かな凸凹構造が形成され時間的に変動する事を実験的に実証することである。今年度は、周波数掃引型のマイクロ波コム反射計が九州大学の直線プラズマ実験装置(PANTA)にて本格的に稼働した。また、周波数固定型のマイクロ波コム反射計を用いて核融合科学研究所の大型ヘリカル装置(LHD)にて分担者と共同で磁化プラズマ乱流計測を行った。実験の進展に伴い、これら2種類のマイクロ波コム反射計を用いた乱流観測で以下のような大きな成果が得られた。(a) 高速周波数掃引型マイクロ波コム反射計によりビート周波数の抽出から反射層までの距離が求められた。但し現在のヒルベルト変換を用いた瞬時周波数の決定ではビート周波数の揺らぎが大きくアンサンブル平均が必要で、この平均操作のため分布の位置精度と観測の時間分解能がトレードオフの関係になっており、最適値を探査している。(b)高速周波数掃引型マイクロ波コム反射計のデータ解析を通じて、ドップラーシフトを通じた反射層の径方向速度計測の可能性を見出した。(c)PANTAにおいて径方向に局所的に強い密度勾配の形成を観測した。この領域で準コヒーレントな揺動が励起されている。周波数固定型のマイクロ波コム反射計によって、この揺動に同期して、密度勾配の小さい周辺領域において、揺動が径方向に弾道的に伝搬する事が明らかになった。ハースト数等の解析からこの現象が雪崩的伝搬の特徴を有する事が明らかになった。(d) LHDにおいてTESPEL入射によってプラズマエッジに摂動を与えた際、ゾーナル流のような構造が1周期間過渡的に励起され径方向内向きに高速で弾道的に伝搬する事が明らかになった。
2: おおむね順調に進展している
これまで周波数掃引型マイクロ波コム反射計が十分には稼働していなかったが、実績で示したように、今年度は本格的に稼働している。これにより微細構造の観測が進展したと言える。乱流のダイナミクスの観測に関しては雪崩現象を示唆する計測データが得られた。最終年度はこれらの成果を統合する事で本プロジェクトの目的を達成する事が可能との目処を得る事ができたので、全体として順調に進展していると判断した。
本研究における要素(1)マイクロ波周波数コム反射計による微細構造の観測法の開発、に関しては周波数掃引型コム反射計の分布の位置精度と観測の時間分解能の最適値を求め、微細構造を探求する。更に先進的な非定常スペクトル解析法を導入する事で、時空間分解能を最適値よりも更に高める事を目指す。(2)微細構造と巨視的構造とのスケール分離に関してはガス種を変えラーマ半径を小さくするとともに温度を上げ、衝突率を低くする。具体的にはこれまでの実験よりも更なる高パワー(8kW)によるヘリウム/水素放電を試みる。(3)微細構造と乱流のダイナミクスの同時観測に関しては、上記の成果で示した乱流の雪崩的伝搬の観測に関して、高速周波数掃引型及び周波数固定型のマイクロ波コム反射計を同時に稼働させ、現象の更なる同定を行う。そして最終年度である今年度はこれらの成果を統合する。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 1件、 査読あり 6件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (8件) (うち国際学会 4件、 招待講演 2件)
Plasma Fusion Research
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