研究課題/領域番号 |
15H02340
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
笹 公和 筑波大学, 数理物質系, 准教授 (20312796)
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研究分担者 |
末木 啓介 筑波大学, 数理物質系, 教授 (90187609)
坂口 綾 筑波大学, 数理物質系, 准教授 (00526254)
松崎 浩之 東京大学, 総合研究博物館, 教授 (60313194)
國分 陽子 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 核燃料・バックエンド研究開発部門 東濃地科学センター, 研究副主幹 (10354870)
松四 雄騎 京都大学, 防災研究所, 准教授 (90596438)
松村 宏 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 放射線科学センター, 准教授 (30328661)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 加速器質量分析法 / 長寿命放射性核種 / 環境動態研究 / 環境トレーサー / 同位体分析 / 放射線物理 / 量子ビーム |
研究実績の概要 |
本研究で開発を進めた6 MV加速器質量分析装置を用いて、Be-10, C-14, Al-26, Cl-36, Ca-41, I-129のAMSによる高感度検出性能の向上を図った。特にハロゲン系の長寿命放射性核種であるCl-36とI-129について検出性能と測定効率が向上し、地球環境試料の実用的な測定を進めた。 Cl-36については、加速電圧6.0 MVでの加速粒子を価数7+から8+に変更して、加速エネルギー54.0 MeVによりAMSの測定を実施した。試料装填において妨害核種となる硫黄の除去を目的としたAgBrバッキング法の開発を進めて、測定バックグラウンドとして同位体比3×10E-15を達成した。Cl-36については、つくば市の降水に含まれるCl-36降下量を調査している。2011年3月の降水において、福島第一原発事故の影響により、これまでの平均値に対して約17倍のCl-36降下量の増加を確認した。また、南極ドームふじのアイスコアを用いた宇宙線イベントの原因解明について、宇宙線生成核種であるCl-36の測定を開始した。I-129の測定では、つくば市の降水において、2011年3月のI-129濃度として(5.4 ± 0.8)×10E10 atoms/L/monthという値を示した。福島第一原発事故前のI-129濃度と比較して3桁近い濃度の上昇を示した。本研究結果は、学術論文として公表をおこなった。また、日本海の海洋循環研究では、放射性ヨウ素I-129を環境トレーサーとした研究手法を開発した。その他、土壌中の微量放射性ハロゲンについて、福島第一原発事故起源の核種の浸透について調査研究を推進した。 本年度は、ハロゲン系の長寿命放射性核種のAMS測定について、筑波大学、東京大学、JAEAとの間で研究連携体制を構築して、研究室間比較検定の準備を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
筑波大学の6 MV加速器質量分析装置においてBe-10, C-14, Al-26, Cl-36, Ca-41, I-129等の実用的なAMS測定が可能となった。特に、ハロゲン系の長寿命放射性核種であるCl-36とI-129について、地球環境試料の測定数が当初の想定以上に増加しており、研究成果として新たな知見が得られつつある。これまでに、日本海の海洋循環研究や福島第一原発事故起源のハロゲン系長寿命放射性核種の環境動態研究について多くの研究成果が出ており、学術論文への投稿準備をおこなっている。なお、地球環境試料の測定数が急激に増加しており、研究計画に若干の遅れが生じた。研究経費の一部を繰り越して、測定試料数の増加に対応した。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策として、多種の長寿命放射性核種のAMS測定において、核種検出性能の向上を図る。特に、ハロゲン系の長寿命放射性核種の環境動態研究への適用を推進する。ハロゲン系長寿命放射性核種については、土壌や地下水、海洋及び大気循環の環境トレーサーとしての活用を図る予定である。陸域環境では、ハロゲン系長寿命放射性核種を用いた地形学的・水文学的な地球表層プロセス研究を進展させる。また、新たな難測定核種のAMSとして、Sr-90等についての高感度検出手法の開発を進める予定である。現在、多種の長寿命放射性核種のAMS測定が実施可能な研究機関の連携を進めており、国内の研究力強化のために研究連携体制を進展させる。
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