研究課題/領域番号 |
15H02343
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
山中 伸介 大阪大学, 工学研究科, 理事 (00166753)
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研究分担者 |
大石 佑治 大阪大学, 工学研究科, 助教 (20571558)
有田 裕二 福井大学, 附属国際原子力工学研究所, 教授 (50262879)
有馬 立身 九州大学, 工学研究院, 助教 (60264090)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 静電浮遊法 / アクチノイド融体 / 物性 |
研究実績の概要 |
無容器のアプローチについては、JAXAの研究グループとの共同研究によりジルコニウムに酸素が溶融した合金であるZr-O合金融体の密度、粘性及び表面張力を静電浮遊法を用いて測定した。測定用試料はZr粉末ZrO2粉末から粉体冶金的手法によって合成し、試料の酸素組成は酸化重量法によって同定した。測定の結果、Zr-O融体の粘性はZr, ZrO2融体の粘性よりも高い値となり、ある酸素組成で粘性が極大となる可能性が示された。また、ドイツのDLRのグループがガス浮遊法を用いた融体の物性測定方法を開発したことから、DLRの研究グループと共同研究を行い、ガス浮遊法を用いてAl2O3-ZrO2融体の粘性及び密度を測定した。これらの実験を元に蓄積した知見とJAXAグループの技術的サポートの元に大阪大学において作製した静電浮遊装置を用いてZr-O合金融体の測定を行い、高い精度で密度の測定が可能であることが示された。これにより、ウランを含む融体の物性測定のための手法が確立できた。 有容器のアプローチについては、アクチノイドを含んだ合金の高温での粘度を測定することで、アクチノイド融体の物性発現を理解することを目的として、容器を用いた粘度測定装置の実用化を目指している。今年度は高温での耐熱衝撃の観点から容器材料の見直しを行うとともに、より精度の高い測定が出来るよう容器形状の改良を行った。 計算機シミュレーションによるアプローチについては、酸化物融体(1-x)AlO1.5-xZrO2を計算対象として、既知の原子間ポテンシャル関数の適用性を検討し、密度および粘性率を評価した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
U-Zr-Feはいずれも酸素に対する親和性が高い元素であるため、試料に酸素が混入して物性に影響を与える可能性がある。そこで平成28年度はZr-O合金の静電浮遊溶融実験をJAXAの静電浮遊装置を用いて実施し、問題なく測定ができること、及び試料の酸素量は酸化重量法を用いて同定できることを確かめた。また、大阪大学において作製した静電浮遊装置を用いてZr-O合金の測定を行い、問題なく測定が実施できることを確かめた。さらに、ガス浮遊法を用いたAl2O3-ZrO2融体の物性測定も行い、浮遊法を用いた非接触による物性測定に関する知見を深めることができた。これにより、当初の予定通り平成28年度までにウランを含む合金の測定のための手法が確立できた。 平成27年度に選定した酸化イットリウムを容器として用いた測定を実施したが、昇温時の熱衝撃によって容器が割れることが頻発したため、試料との反応性と耐熱衝撃性を併せ持つ材料として窒化ホウ素を選定した。また、パラレルプレート法では試料の偏りで粘度測定値にばらつきが出ることが分かったため、円錐形状のプレートを用いた測定容器に改良を行い、安定的に粘度測定が出来るようになった。 計算対象を(1-x)AlO1.5-xZrO2(x=0, 0.1, 0.2, 0.5)とし、2473 Kにて密度および粘性率を評価した。計算には、Pedone等がガラスのMD計算用に開発したポテンシャル関数を使用した。粘性率は平衡MD計算からグリーン-久保の関係を用いて求めた。その結果、小さなxの値に対して密度が高くなるものの、xの増加とともに、密度および粘性率が増加することが分った。
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今後の研究の推進方策 |
大阪大学で組み立てた静電浮遊装置を用いて、U-Zr-Fe合金試料の静電浮遊実験を行い、融体の密度、粘性、表面張力を測定する。また、改良した材質及び形状の容器で模擬合金およびU-Zr-Fe合金試料の動的粘弾性測定を実施する。計算については、タイトバインディングポテンシャルを用いた溶融金属のMD計算を可能とする。また、酸化物の融体に適したポテンシャル関数を継続的に検討する。パラレルプレート法、MD計算で得られた結果と静電浮遊装置を用いて得られた結果を比較検討し、アクチノイドが融体の物性へ及ぼす影響を評価する。
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